現役30年のアナウンサーが教える。空間を上手に使った話の仕方

 

そして今回は、聞き手の人数と距離を意識し、それを利用すること、について。聞き手の人数と距離の関係については、前々回、お伝えしましたが、今回は、その距離を、聞き手との共有空間として利用すること、YouTubeでの生配信で言えば、あなたと私の間を、どう使うか、です。具体的には、カメラレンズと自分との間にある空間のことです。

ステージ上の自分と聴衆のみなさんとの間なら、空間はだいぶ広くなりますね。ごく簡単に表現するならば、話し手はその空間を、立体的なモニターのように扱え、ということです。その3D空間を、聞き手に見せて、イメージさせて、考えさせる、ということです。

具体的には、例えば、体の動きと話の意味をリンクさせて、高い目標と低い結果を動作で表現したら、その高いと低いの間にある空間は、何だろう?何故だろう?と問いかける。その空間のイメージを、聴衆の考える対象にするわけです。

別の例で言えば、滑らかで、頬ずりしたくなるような、流線形…と、自分で指先を動かせば、その指先の位置や形と、その動作を自分で見る視線の向かう先によって、空間が形成されますよね。これが、話し手と聞き手双方にとって、共有できる立体的なモニターになるわけですね。

これこそ、パワーポイントでの表現や、実物を見せることではできない、話し手の表現力、人としての魅力、ということになります。パワーポイントなどを平面のプロジェクターの画面に映し出したり、実物を登場させたりするのは、そのあとのほうがいいでしょう。

なぜなら、話し手が先に空間にイメージを描ければ、まさしくそれは、話し手が描く理念や、強調したい真意のように聞こえるのに対し、モニターに映し出される映像が先行してしまうと、どうしても「しゃべらされている」感が出てしまうからです。

数値や事実を見せるだけでは、話がちっぽけになってしまうものですし、どんなにカッコつけて話しても、所詮、操り人形のように見えてしまいます。

理念を語る。考えさせる課題を提示する。微妙な心の動きを表現できる。それこそが、誰でもできる話ではない、その人だからできる話に必要な要素であり、そういう言葉に、動作を付けよう、ということです。このような、話を見せる動作は、話し手に魅力、カリスマを付与します。

いっぽう、本当に実務的に事実や要点などを報告するような話であれば、もちろんそのような動作は不要です。話し手が魅力的になる必要自体が無いのであれば、です。

例えば重要な発表をしたいときに、説明者は、淡々と話し、動作を見せる話し方ができる魅力的な出演者を、別に用意する、という手はあると思います。

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