ある種目の一流選手に骨粗しょう症が多い理由が教訓めいている話

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一流の自転車選手の骨量(骨密度)が80歳の老人程度しかなかったという症例があるそうです。同様のことがバイクや車のレーサーにも見られ、常に運動していたとしても骨への衝撃が極端に少ないと骨の強度は維持できないようなのです。そんな「衝撃」の事実を紹介し、そのことについて考えるのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。山崎さんは、この事例に人生の教訓めいたものを感じているようです。

骨と衝撃のこと

「骨粗しょう症」。老人や閉経後の女性に多い病気である。こう書くと何だか病気というよりも老化現象の一つといった感じもするが、近年続々と報告されるようになった若年層の症例を見ればやはりそれは病気と言うべきものなのであろう。

しかもそれは特定の生活習慣に起因するものであるから、ある種の生活習慣病とも呼べるものなのである。では、どのような生活習慣下にあれば発症しやすいのか。

簡単に言えば、骨への衝撃が少ない生活である。我々の骨にはただ歩くだけ、階段を上るだけ、下りるだけでも結構な衝撃負荷がかかっている。走れば当然それは増すし、飛んだり跳ねたりすればさらに増す。

こういった日々の骨への衝撃負荷が、幼い頃から極端に少ない人たちがいるのである。具体的に言うと、自転車、バイク、クルマなど、乗り物を使うスポーツの天才児たちである。彼らはそれらのスポーツにおいて、ある種の天賦の才を見出されると(家庭環境さえ許せば)徹底した英才教育を受けることになる。

つまり、自転車やバイクやクルマにばかり乗ることになるのである。仮にそのまま成長して一流選手にでもなってしまえば、他の平均的な人に比べて遙かに骨への衝撃負荷が少ない生活をおくることになるのである。

とは言え、一流選手である。彼らがまとっているのはそれこそ一流の筋肉である。自転車競技にしろバイクレースにしろ、その筋肉を駆使して加重し抜重しギリギリのバランスでタイムを削って行く極限のスポーツである。その選手の骨・腱・靭帯・筋肉の組み合わせが悪いとは誰も想像していなかったに違いない。

ところがそういった選手たちの身体において骨だけが極端に脆いというデータが次々と発表され始めたのである。中には一流の自転車選手でありながら骨量(骨密度)が80歳の老人程度しかないという衝撃的な症例もあった。彼らが日々繰り広げている激しいレースのことを思えば本当に嘘のようなデータである。

このことからも分かる通り、我々の骨が健やかであるためには毎日の単純な衝撃負荷が必要不可欠なのである。となれば、エアロバイクよりはウォーキング、ウォーキングよりはジョギング、ジョギングよりはダッシュの方が骨の鍛練にはいいということになる。それも緩衝機能のあるトレッドミルより硬いアスファルト(ターマック)の上を走る方がいいということである。

考えてみれば、子供たちは骨に衝撃を与えるようなことをやたらと好んでやる。走り回ったり、飛んだり跳ねたり、飛び降りたり、傍から見ていて大丈夫なのかと思うほどである。そうやって成長期の骨を鍛えているのである。

それにしても「衝撃なくして健全たり得ない」というのは如何にも人生の教訓めいていてちょっと面白い。我々の身体は精神同様、多少の衝撃負荷を常に求めているのである。逆に言えば、その強烈さに耐えることさえできれば、衝撃(インパクト)分の成長くらいは期待できるということでもあろう。

人間、なかなか楽して強くはなれないみたいである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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