日本人の死亡原因の第1位であるがん。その中でも最も多い死因が肺がんです。年間でおよそ7万人もの人が肺がんで亡くなっているといいます。肺がん全体の20%を占めるといわれる小細胞肺がんというものがありますが、実は高級住宅地の真ん中にある病院では極端に患者数が少ないといいます。一体なぜなのでしょうか?医師でメルマガ『ドクター畑地の診察室』の著者でもある畑地 治さんが、その興味深い理由について教えてくれています。
「ウサギとカメ」に例えられる2つの肺がん
朝夕めっきり寒くなってきました。今回は以前少しだけお話ししたウサギのがんとカメのがんを覚えていますか?その「ウサギのがん=小細胞肺がん」と「カメのがん=非小細胞肺がん」についてお話ししていきたいと思います。
今でこそ精密医療の必要性が言われ、肺がんのドライバー遺伝子を解析して治療方針を決定する時代になりましたが、15年以上前は肺がんの治療は2通りしかありませんでした。小細胞肺がんに対する治療と、そうでない非小細胞肺がんに対する治療の2通りです。この2つのがんは大きく治療方法が異なります。今回は小細胞肺がんについてお話しします。
小細胞肺がんと喫煙率の密接な関係
一般的に小細胞肺がんは肺がん全体の20%を占めると言われていますが、病院の立地条件によってかなり異なります。何故なら小細胞肺がんは、タバコを吸わない人にはほとんど発症しないがんだからです。一言で言ってしまうと、喫煙率は生活状況と密接にリンクしています。例えば、高級住宅地などの真ん中にある病院には小細胞肺がんの患者は少なく、喫煙率の高い地域の真ん中にある病院には非常に多い印象を受けます。都会などでは、その病院の立地条件によって、同じ都市内でもかなり小細胞肺がんの患者数が変わってきます。このことは成書には記載されていませんが、肺がんを診療している多くの医師が気づいていることなのです。
また呼吸器内科では、小細胞肺がん患者の占める割合は若干多くなるかもしれません。何故なら、小細胞肺がんは進行が早く、発見された際には全身に転移していることが多いため、一部の例外を除いては手術で治療することは少ないからです。そのため呼吸器外科で治療することはほとんどなく、呼吸器内科に患者さんが集中するからです。
(中略)
今からでも遅くない。タバコをやめればリスクは下がる
今から30年以上前の私が医学生の頃には、このがんの5年生存率は“ほぼ0%”と学習しました。今は随分と医学が進歩し、私の患者さんでも完全に治癒した方は少なからずいます。しかし非小細胞肺がんの治療と比べると、まだまだ発展途上で今後の治療進歩が期待されます。
冒頭でも述べたように、このがんは非喫煙者にはほとんど起こりません。小細胞肺がんと非小細胞肺がんのうちの扁平上皮がんは、特に喫煙との因果関係が強いと言われています。タバコをやめて7年経過すると、肺がんの発症率が著しく低下します。いつからでも遅くありません。禁煙しましょう。
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