探偵が追跡に成功した卑劣な「悪徳商法」営業マンの口八丁手八丁

 

2014年~2016年と2018年~2019年の問題

AさんもBさんも業者を相手取り民事裁判をしたが、結局、業者は一度も出廷せず、欠席裁判となって全面的に勝訴した。しかし、業者は裁判の支払い命令に応じず、差し押さえる資産もないということで、裁判費用を持ち出したというだけで終わってしまった。

この悪質商法は会社の名義や社長名だけが異なっているが、同一の組織的な詐欺グループによるものである。

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上の写真は、2016年に起きた有名企業だと偽って起きた同様被害で使われた書式と2018年から被害が出た本件被害の書類だ。

フォントや書式、枠の幅など同一の書面を使っていると考えられるのだ。

手口

ターゲット絞り

ターゲット絞りには、主に売りに出ている別荘地のデータベースが使われた。そのため、この件は報道などでは「原野商法の二次被害」だと言われているが、1970年代から80年代などに草ぼうぼうでほぼ無価値に近い土地を騙し売ったという原野商法の被害者が狙われたわけではない。

原野商法が盛んになった時期は、「モーレツ社員」とか「24時間戦えますか?」など企業戦士時代でもあり、高度成長期でもあり、別荘などの開発が進んでいた。

つまり、この時期、モーレツに働き、夢を持ち、将来ゆっくりと暮らしたいなどと考えて別荘地を買った人がターゲットにされていたのである。実際の被害地は、伊豆や那須、長野、山梨など大手不動産事業者などが別荘開発した別荘地であった。

未だに多くの日本人は自分たちが豊かだと思っているのかもしれないが、それは過去を生きていると言えるほど時代錯誤である。日本人の年収はどんどん下がり、中流層は破壊されつつある。

だから、別荘地の管理費や固定資産税などは個人資産を圧迫する要因となり、多くは売りに出される流れができているのだ。そのため、かなりの数で別荘地は売りに出されている。しかし、そのほとんどは売れ残るのだ。

今回の悪質商法グループは、この売れ残りを狙ったのである。

売りの希望がある物件であれば、いくらで売りたいか?も、どの程度の期間売れ残っているかもわかる

書類や人など準備

この悪質商法は、まず逮捕のリスクや破産のリスクを背負わせる人物を探すところから始まる。この役割は、「代表取締役」になる。過去に起きた類似事件でも、代表取締役の住所は家賃5万円を超えないアパートの一室になっており、堂々と居住していた。月に何十件もの不動産取引をする都内有数の一等地に会社を構える社長の家とは誰も想像がつかないであろう。

営業部隊は、金が欲しいと思っている若者をハントした。彼らの多くは、スポーツなどでそこそこの成績を出すも、プロになるレベルまでにはなれず、地元から離れて、金と女が手に入るとホストになっている。しかし、ホストでもうまく行かず、借金をしたりしている者を選んだ。

次に、宅地建物取引士の資格保有者を探す。名義貸しはさほどハードルが高くないから、簡単に見つかる。

書類は法律家崩れの元資格保有者に作成させた。不動産取引に必要な証明書類などもチェックシートを用意して、素人でも必要書類を用意できるようにしたのだ。法人としての登記や不動産事業を行う許可も書類が整っていれば、簡単に行う事ができる。

手口は不要になった土地を買うと見せかけて、実際は土地交換を行うという手法だ。さらに書面をよく読んでいけば、被害者はその土地交換において不足分の費用を支払うということになっている。

本来であれば、不動産取引は宅地建物取引士が直接、重要事項説明をしなければならないことになっているが、ここではそうした説明はない。必要書類のチェックと、書類への署名や押印、手数料と称した費用の支払いだけを急がせるのだ。

質問や書類のチェックをしてくる被害者には、税金がかからないようにするための緊急的な措置で、あとでキレイにするから大丈夫だと営業部隊は説明した。トドメは、代表取締役と称した人物からの電話である。ここで、被害者の口座の確認や支払い金額の確認をする。

こうした話を聞いた被害者は、不要となり売りに出した別荘地が現金化されるものだと考えてしまうものだ。

土地交換となる実際の土地の所有者も被害者の土地であるから、結果、被害者同士が土地の交換をしたということになり、双方が手数料名目などで支払った費用が事実上の、悪質商法の収益となる。

刑事事件とならぬようにした彼らの対策は、書類通り土地を交換してきちんと登記することであった。その場で録音をするような人はいないから、残るものは書類だけだ。領収書を残しても、それは手数料名目になっているから、普通の取引だと言い逃れることができる。

民事不介入の原則がある以上、そもそも騙すために行ったことであっても、残る証拠が通常取引と変わらぬものであれば、証明が難しい詐欺で警察が捜査をするはずもないと考えたのだ。

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