業者は逮捕もされず分散し潜伏している
彼らの中心的組織は、このようにいつでも切り捨てられる代表取締役と営業マンを使い、簡単に作ることができる法人(株式会社)名義を最終的には清算して終わらせる。せいぜい、消費者庁で問題になり、都道府県から営業停止を食らう程度であるから、捜査の手が及ぶことはない。
民事訴訟で支払い命令が出ても、差し押さえをされなければ、お金を取られることはないから、平気で裁判を無視できるわけだ。納税する気もないから、いちいち帳簿もつけないし、様々な費用も払う気がないから、口座も空にできる。単純に騙し取った現金が中心的組織を担う反社会的勢力に流れるだけなのだ。
すでに問題となった不動産業者は清算しているが、悪質商法の実行部隊であった営業マンらは、散り散りになってすでに他の業者を名乗って同様の悪質商法を始めている。また、余った土地は新たに作った別会社の名義なって悪質商法のネタになっているのだ。
別会社はこうした被害を起こすために準備されているもので、すでに中央区、品川区、世田谷区、新宿区に作られており、営業保証金相当の供託を協会に済ませており、都から不動産業者の認可もうけて営業している。事実上はその場所がアパートなどであるため、営業活動にまでは至っていないが、準備は着々と進んでいる。
今のところ目立った被害はないので、詐欺的手法の状況証拠のみではどうにもできないということであった。
私は悪質商法の営業マンを追跡することに成功した。
彼は20代の地方出身者で、先輩営業マンと都内高級住宅地にあるデザイナーズマンションに住んでいたが、現在はほとぼりをさますため、友人宅などを転々としている。
関係者によれば、彼らは営業レクチャーを受けている。つまり、実態として、「土地を買わせてください」と誘い、その実、「土地交換」であることを知っている。土地交換がバレそうになれば、節税のためだと言い逃れ、そのまま行ければ、手数料名目を騙し取って逃げる。もしも、疑いを強く持たれれば、土地売却の入金日をチラつかせ、それでもダメなら、逃げ帰る。相手は高齢者だ、逃げるだけなら彼ら若者は容易なのだ。
被害者に残す書類は、土地交換をしたというだけのものだから、その後問い合わせが来ても、「書類の通りですよ」と言い逃れる。訴えられても、民事であれば、無視すれば、判決が出ても、差し押さえは現実できないから、放置で良いなど、その教えは、現行システムの穴をつき、信じることが善の高齢者の常識を悪用したもの、さらに司法のシステムなどを馬鹿にしているのだ。
この先、およそ事実上分社したいずれかの不動産業者が中心となり、この悪質商法を展開するであろう。その間までに法の穴を埋めるか、それとも、被害者が団結し、警察捜査を動かすかということが未然防止に必要だと思うが、果たしてできるであろうか。
編集後記
私どもは、悪質業者を追ったり、その実態を暴いたりすることは得意です。また、関わる者から情報を得たり、追跡して身元を割り出すことなどはできます。しかし、民事裁判などは弁護士さんの専業ですし、逮捕は警察の仕事です。立法は国会の仕事であり、法に逆らうことはできません。
悪質商法の実態は暴きました。関係者の身元も把握しています。
しかし、この仕組みを解明し、キャッシュフローから資産を追っても、結局ブラックマーケット(反社会的勢力)に流れてしまったことまでしかわかりません。それ以上は仕事の範疇を超えますし、そもそもの帳簿がないので状況証拠しか残らないのです。
こうした被害が二度と起こらないようにするには、仕組みを変えたり、司法制度を強化したり、被害者になり得る層への教育となりますが、それがこれから為されるのかはされないであろうと思えてしまうのです。きっと1年そこらほとぼりを覚ませば、また被害者が量産されてしまうでしょう。ですから、少なからず私にできることの意味で、レポートしました。こういう被害があるのだと知ることで、被害を未然に防ぐ効果があります。
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