日本人の患者にだけ共通するセリフに、米国の医師が驚いた理由

 

「お酒やデザートがストレス発散になり、長い目で見て幸福への手助けになるという価値観と、医学的に人体にとってアルコールや精製されたシュガーが悪質に働く、という問題はまったく別なんだよ」
「あったりまえじゃん、そんなことはわかってるよ」
「違う、わかってない。日本人はそのあたりをぐちゃぐちゃにしがちなんだよ」と言います。そして、その感覚は日本人特有のものだと彼は続けます。世界中で日本人だけのもの、だと。

「ハッキリ言って、アルコールも精製された砂糖も人体にはまったく必要ない。悪い、ものなんだよ。その事実は変わらない。シュガーは、悪い。それ以上でも以下でもない」
「うん」
「で、その上で、そうは言っても、たまには食べたいよね。身体には悪くても、幸せを感じるから、少しくらいはいいよね、っていう意見には個人的に賛成する」
「どう違うの?」このあたりから僕はこんがらがって来ます。

「全然違う。0.0000001グラムでも良いか、悪いか、で言うと、医学的には人体には悪いんだよ。長い目で見てストレス解消、幸福感で、人体によかったとしても、それはまた別の話なんだ。医者の僕が患者に言うのは、シュガーは身体に悪いですよ、で完結のはずなんだよ」
「…うん、なんとなく、わかる」
「でも、世界中のあらゆる患者さんの中で日本人だけが、『でも少しくらいは、いいですよね』『でもたまには、問題ないですよね』って言ってくる」

「だから、それは、ストレス解消にもなるし、幸福感を感じ…」
「だーかーら、それは、まったく違うイシューの話で、その後の個人の見解なんだよ。個人の生き方の自由で、医者の僕の意見は、“砂糖=悪い”以上!なんだよ」
「でも、彼らの言いたいことはわかるだろ」
「わかるけど、わからない。わかっちゃダメなんだよ。人体的に悪いという話と、価値観的に良いという話を同列に話すのは日本人の特徴なんだよ」

日本人の僕は、日本人の気持ちがわかります。単一民族、単一言語、単一宗教の僕たちは、国民みんなが「あるある」を共通認識として持っているからです。いや、彼ももちろんわかっています。でも、世界ではわかりづらいらしい。

つまり、「お酒もスイーツも、少しくらいならストレス解消になるし、QOLも高くなるし、いいですよね」とまで説明してくれたら、理解できるけれど、日本人独特の「言わなくてもわかってくれるでしょ」の感覚で、「お酒もスイーツも、少しくらいなら、いいいですよね」というハショった質問には、アメリカ人の医者は、一瞬、びっくりするらしいです。お酒も、スイーツも、少しくらいでも、よくはない、からです。「でも、ストレス解消になるから」というコンディション(条件)をくっつけて説明しないといけないらしい。めんどくさい。

でも、それは彼らが理解力がないのではなくて、「アルコール、シュガーが人体に良くない」という話と、「回り回って、ストレス解消になるから、逆に精神的にいい」という話は、まったくフェーズの違う話だから、だそうです(わかりづらくてスイマセン)。帰り道、あいつ、ちょっと、細かいな、と考えながら、でも、そうは言っても、確かにそうかもな、とも思いました。今回のニューヨークのロックダウン発令と、日本の非常事態宣言発令における、国民の受け取り方の違いが頭によぎったからでした。

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