お役所のくだらない美学。日本の給付金支給が混乱する当然の理由

 

そうではあるのですが、現時点では各市町村で膨大なエラーチェックが発生しているようです。本人が自分と家族の名前と、銀行情報を出すだけなのに、どうして膨大なエラーが出るのでしょうか?また、オンライン入力の場合はエラーだらけになるので、郵送のほうが速いというような報道も出ていますが、仮にそうだとしたら何故なのでしょう?

それは、オンライン入力というのが厳密に言うと「システムへのオンラインでの入力」ではなく、「システムに入力する元データをオンラインで作成」するだけだからです。つまり、入力時にはエラーチェックがかからずに、何でも通ってしまうのです。

例えばですが、入力時に住民基本台帳との照合ができて、おかしなデータはエラーで弾くとか、正規の情報に自動修正されるのならいいのですが、そんなことはなくて、何でも通ってしまうわけです。また銀行情報の場合、オンラインバンキングの場合は、全銀協のDBを見に行って「正しい支店・口座・名義人情報」に誘導されるのですが、それもありません。

その背景には「プライバシー問題があるので、正規データにアクセスできない」という問題、そして「正規データにアクセスできて、しかも情報の機密性が守られるようなシステム設計をするカネもノウハウもない」という問題があるわけです。

一方で、やたらに厳格な事務作業の「美学」があるということも問題です。例えば、東京都のA区のBという住所に住民票のある「高田C」という人が申請をしたとして、その「高田」を「ハシゴ高」つまり真ん中の口の部分が上下にくっついている「異体字」なのか、それとも一般的な「高」なのかというのは、「本人特定にはどうでもいい」問題です。

そのCさんの親が、やたらに「はしご高」にこだわって、戸籍をそうしていたが、Cさん自身は「こだわりがない」ので、「高田」と記入したが、住民基本台帳とは相違になった、そうすると「目チェック」でエラーにしなくてはならない、というのは、全く意味がないと思います。それで不正支給や二重支給になることはありません。ただひたすらに役所の「書類は正確でなくてはダメ」という美学、もしくは前例に従ってやっているだけです。

銀行口座の姓名の間の「一字アケ」というのも、これも意味がないわけで、「サイトウ ジロウ」さんのことを「サイトウジロウ」としたからといって、誤支給にはならないはずです。この辺は、役所というより銀行サイドの問題もある思いますが、そうした意味のないエラーチェックというのは、誰のトクにもならないと思います。

アメリカの場合ですが、例えば銀行口座の場合は本人が死亡した場合は口座閉鎖になるので、行き違いはまずないのですが、小切手の場合は死亡した人の名義で届いてしまうことはあります。その場合は「返送してください」という運用で済ませているようです。また、IRSの把握している銀行口座とは別の口座にもらいたい場合には、オンラインで口座変更もできるようになっています。

とにかく、オンラインで入力する際に、何のエラーチェックもかからず、役所ではそれを紙にプリントしてシステムと照合、エラーを弾くための膨大な作業をしている、しかもそのエラーの多くは「誤申請、二重申請」につながるものではなくて、形式要件のみというのは、バカバカしいを通り越して、全く理解不能です。最近は「日本人はITが苦手だから仕方がない」という言い方もあるようですが、このままでは経済も国家も消滅してしまう、そのぐらいの非効率であり、バカバカしさであると思います。

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