達筆で有名だった弘法大師にちなんだ言葉「弘法筆を選ばず」。誰しも聞いたことがある言葉だと思いますが、この本来の意味を知っていますか?実はちょっと想像している意味と違うかもしれません。今回の無料メルマガ『毎朝1分! 天才のヒント』では著者の倉橋竜哉さんが、 身の回りの道具を使いこなすことのできる人が一流になると話し、その言葉の本来の意味も紹介しています。
道具を選ぶ
皮むきは100均のピーラーを使う倉橋竜哉です^^;
「指を切り落とさないように気をつけてねー」と言われたのは、中華料理屋でお手伝いをした時のことでして、もう数十年も前の話になりますが、友人のお店でスタッフがインフルエンザにかかってしまい、スタッフ数名が欠勤、しかもその日はどうしても断れない宴会の予約が入っていて、「とにかく手伝って欲しい」と連絡がありまして、お店に入ったことがあります。まあ、野菜の皮むきぐらいなら手伝えるかなと。
その時、まず任されたのが青菜を5cm幅に切っていくことでした。大量の青菜が入ったかごを渡されて、「ココでやって」と案内された所に置いてあったのが、まな板とでっかい中華包丁でした。牛の首でも落とせそうな、四角くて平べったい刃がついた包丁であります。
使ったこと無いので怖くて、他の包丁は無いのか聞いたところ、それしか無いそうで、「指を切り落とさないように気をつけてねー」と言われて、その場を任されました(汗)。
最初はおっかなびっくりでして、なんせ握っているところと、刃が食材に当たる部分と距離があるので、感覚が掴みづらいわけです。それでも少しは慣れてきて、青菜をザクザク切ることぐらいはできるようになりました。
その後、じゃがいもや大根などの根菜類を渡されて「皮むきよろしく!」と言われたのですが、これが苦労しまして、でっかい包丁でやるのが本当に難しいのです。皮むき器が無いのか聞いたところ、「こうやってやればいいんだよ」と、でっかい中華包丁を小器用に使って、スルスルと皮を剥いていきました。
その手付きは鮮やかで、芸術的でしたね。思わず見とれてしまいました…。これがまさに「弘法筆を選ばず」だな、と。弘法大師(空海)は、達筆で数々の書を遺したと言われていますが、それにちなんだ言葉も残っていまして、「弘法も筆の誤り」とか「弘法筆を選ばず」とか…。
自分の不出来を道具のせいにする人に対して、「弘法筆を選ばずって言うよ」なんて皮肉を言ったりしますが、実際に弘法大師は、筆を選んでいなかったのかというとむしろ逆でして、彼は遣唐使として大陸に渡った際に、筆を作る工房で優れた筆の作り方を習っていますし、遺した書からも、逸品と呼ばれるような高級な筆を使っていたことがわかっています。
雑な作りの筆でも最高傑作が生み出せたのか、というと、そうではありませんでした。やはりいい作品を作るには、いい道具が必要なわけです。
…その上で、なぜ「弘法筆を選ばず」と言われるのかというと、弘法大師のように優れた技術を持っている人ならば、大衆が使う粗野な筆はもちろんのこと、手間ひまかけて作った高級で貴重な筆もその真価を発揮して使いこなすことができますよ、というのが本来の意味であります。決して「道具にこだわるなんて野暮だぜ」という意味ではありません。
使い物にならないようなガラクタを使って、最高級のものが生まれた!というのは、美談としてはステキですが、現実は、いいものを生み出すには、それなりの道具や技術が必要であります。
ありがちなケースとして、道具にこだわりすぎて、道具を揃えることが目的になってしまっては本末転倒ですが(汗)、少なくても、一流を生み出す人の手元には、一流の道具があることでしょう。
ちなみに上述で私に渡された中華包丁は、かなりの高級品だそうでして、お店を開いた時にお祝いでもらったものだったそうです。私には完全にオーバースペックでしたが、オーナーの彼は見事に使いこなしていましたね。
さてさて、これをお読みのあなたの手元には、どんな道具があるでしょう。そこから、どんな成果が生み出されていますか?
★まず私からあなたにこの言葉をお届けします
「どんな道具を使っていますか?」
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