まるで「のり弁」。いじめ問題で請求した資料を黒塗りする自治体の異常

 

開示請求の不正を許すな

このような、ある種の「不正」は起きてはならないことだ。しかし、多くの人が生涯のうちで、自分自身の記録がどうなっているのかを情報開示請求する経験はほとんどないだろう。

ところが、いざトラブルに巻き込まれれば、こうした記録が必要になってくる。その時に、様々なハードルや理不尽に出くわすことになるのだ。

いじめの被害者然り、ハラスメントや学校の事故、体罰の被害者然り、統計などを分析している研究者も然りだ。

私は主にいじめ問題での開示請求をおこなっているが、地方自治体によってその実態は様々であり、資料の呼び方も違うことがある。

ひとつ言えることは、各自治体で開示請求とその審査などを含めて、それらがどのようにおこなわれているかをしっかりチェックして実態を把握する必要がある。

Wikipediaによれば、国内には1741もの自治体があるということだから、各地のオンブズマンや市議会などの議員さんなどでこれを総点検してもよいのではないかと思う。

例えば、問題の争点となる課や部局が、その審査に当たるというようなことは不適切であろう。

また一方で、紙ベースやデータ自体がバラバラに管理されていることで、開示対象を検索するのに膨大な時間が掛かってしまうという問題もある。これについてはデジタル庁に期待したい。

紙ベースのファイルから関連する資料を探し当てるのは大変な時間と労力がかかるが、データベースから検索をすれば、数秒から数分で関連する資料を探し当てることができる。

改ざんや紛失についても、バックアップや認証などのプロテクトが機能していれば、シュレッダーにかけて追跡不能にすることはできないだろう。

デジタル技術の進歩をうまく活用すれば、不正を極力できないようにすることは可能なのだ。

私は常に、いじめやハラスメントなどの被害者に付き添っているが、学校や教育委員会などに踏みつけにされ、場合よっては第三者委員会からも踏みつけられ、その上、自治体による不正や嫌がらせではないかと思えるほどの対応に心を痛めることが多くある。

これは、ある種の「二次被害」といえるだろう。そして、その多くは「あってはならぬ理不尽」と言えるようなものばかりで、それが当たり前のように存在しているのだ。

未だ被害者になった経験のない大勢の方は他人事のように感じるかもしれないが、いつ自分が被害者になるのかは分からない。これはまさに「隣にある現実」なのだ。

被害者の多くは、被害を受けるまでは「その他大勢」であり、特に何の非もない人たちだ。いつ起きるかわからぬトラブルを怖れているのは不毛だという考え方もあるが、怖れるのではなく、 こうしたことが起きないように仕組みや構造を再検証すことは必要だろう。

本来、全幅の信頼を寄せているであろう自治体において、不正を許してはならない。

編集後記

近々裁判になるようなので都道府県名は明かせませんが、 関西地方のあるいじめ被害者は、同じ題名で作られていた文書が2種類あって、それが被害者用と市長部局への説明用であったことが明らか になっています。

他にも、 いじめの遺族側が行政手続きをしても、見ることも、その資料があることも明かされなかった資料が、第三者委員会では普通に配布されていたという問題もあります。

こうした資料は、問題の根本に当たる上で基礎となるような重要なものが多く、これらの資料の組み当てによって結果がまったく違ってしまうものです。

つまり、教育委員会の担当課などによって、 重要なプロセスが捻じ曲げられてしまったことを意味します。如何に第三者委員会などの中立性が確保されていても、事務局が捻じ曲げるのですから、相当なキレ者がいても、この不正になかなか気付けるものではありません。

私ですら、問題に当たるまでは、こうした不正が起きるとは想像もしていませんでした。あまりにショッキングに思うようなことが、いじめ等にかかる問題で当たり前のように起きています。

それに気付くことは容易ではありません。私は常に起きるものだという認識で点検をしているので、気付く率は高いかもしれませんが、それでもわからないことはたくさんあります。

気付くよりも、積極的に「防ぐ」ことの方が大切という状態にあると思います。今や「デジタル」が当たり前の時代ですから、仕組みを構築することはさほど難しくないはずです。

一方で、こうした不正が発覚しても、そのままスルーされることが圧倒的に多いのです。一般的な感覚からすれば、懲戒免職相当なのではないかと思っても、現実はせいぜい訓戒程度で、うやむやで終わってしまいます。聞けば「裁く法がない」とのことですが、たとえ法があっても運用しないのではないかと思えてきます。

「次世代に苦労を掛けるな」という言葉を発した方がいましたね。私もその通りだと思います。

こうした不正や理不尽、そして世間とかけ離れたトップがいたり、理不尽なことで人の命を奪っても裁かれない立場の人が存在することを含め、私たちの世代で終止符を打つことが、次世代に苦労を掛けないことだと思います。

まずは総点検から始める必要はありそうですが……一歩踏み出すことが何より大切なんだと思います。

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
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