まるで「のり弁」。いじめ問題で請求した資料を黒塗りする自治体の異常

 

個人情報保護を伝家の宝刀にする行政の卑劣

個人情報保護は確かに重要だ。みだりに出せるようなものではないし、地方自治体はこれを守るのは当然だ。

しかし、いじめの被害者が、自分の情報がどのように管理され記録されていたのかを知るために情報開示を求めた場合、個人情報の保護をする必要があるのだろうか。

関西圏に住むいじめ被害者が、自らの情報を求めた際、「黒塗りの記録」が出てきたことがある。これを不服として再審請求をして黒塗り部分が開示されたが、結果、その内容は本人について担任が書いた、さして問題もないような記録に過ぎなかった。

この際、黒塗りをしたのは学校を監督する課であったが、なぜ黒塗りにしたかについての理由を問うことはできなかった。

報道をみれば、より多くの事例が出てくるが、2月8日の報道によれば、高知県の公立学校の体罰事故に関する報告書を情報開示した際、「県教委が教員名や学校名を非開示した決定は違法だ」として、神戸大学の教授が取り消しを求めた訴訟の判決があったとある。 

この件では、県教委は小中高数が少ない市町村が多いことなどから「開示すれば、被害生徒が特定されるおそれがある」として学校名や教員名などを非開示にしたということであったが、高知地裁は判決で「プライバシー保護の範囲を拡大することは、知る権利を過大に制約しかねない」として神戸大教授の請求を認めた。

このような事例は枚挙にいとまがない上、実は日々報道されていることなのだ。

一方、(被害者からの制約により県名などの詳細は公表できないが) 東海地方のいじめ被害者のご遺族は、第三者委員会の調査報告書が「ご遺族側の意思で非公開となった」という件について、「そんな意思表示はしていない」と憤っていた。

この第三者委員会の報告書の内容は、学校や教育委員会の対応が極めてずさんであったという項が多数あり、彼らにとって不都合だったのではないか、という話をしてくれた。

つまり、 個人情報のみならず、被害者やご遺族が公表の機会を持てなければ、その意思すらも歪められて悪用されてしまうのだ。

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