正社員に「業務委託契約」への切り替えを強要するブラック企業の悪質な手口

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新型コロナウイルス感染症の収束時期が見えず、先行きが不安な状態が続いている日本経済。この状況下の中、さまざまな手を使って正社員のリストラを断行する企業も増えているのが現状ですが、中でも悪質なものが「業務委託契約」への切り替えを強制する手口です。メルマガ『ブラック企業アナリスト 新田 龍のブラック事件簿』の著者で働き方改革コンサルタントの新田龍さんは、従業員にメリットの部分もある「業務委託契約」を悪用し、リストラや減給の代わりに利用しているブラック企業の実態について、実例をあげながら詳しく紹介しています。

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社員を「業務委託」契約に変更させて働かせるブラック企業の実態

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、我が国の雇用環境は劇的に変化した。厚生労働省の発表によると、コロナによる解雇や雇い止めは8万8千人を超え、雇用調整の可能性がある事業所も全国で12万箇所超となっている(2021年2月19日現在)。ただこの数字はあくまで国が把握している人数に過ぎず、実際の失業者数はさらに多いとみられる。

● 新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(厚労省) ※PDFが開きます

また、大手企業でさえ希望退職を募るほどコロナの影響は大きく、2020年上場企業の早期・希望退職は93社にのぼり、これはリーマン・ショック以降では09年に次ぐ高水準だ。

● 2020年上場企業の早期・希望退職93社 リーマン・ショック以降で09年に次ぐ高水準(東京商工リサーチ)

そんな大々的なリストラ渦中において、解雇や雇い止め、早期退職ほどは報道される機会がないものの、着実に進んでいるブラックな手口が存在する。それが「業務委託契約の悪用」だ。

これは、正社員の雇用契約を業務委託契約に切り替えたり、最初から業務委託契約で人を募集したりして、彼らに個人事業主として会社の仕事を請け負ってもらう、という手段である。

業務委託契約のメリット

ただし注意が必要な点がある。先ほど「ブラックなリストラ手口」と言い切ったが、「業務委託契約」自体は何の問題もない合法的なものだ。正社員から業務委託契約への切り替えについても、働き方改革の一環として一部大手企業などで数年前から導入されている。

もちろん、働き手にとってのメリットもある。雇用されるという立場ではなく、独立した事業主として仕事をしていくため、

  • 自分で仕事を選べ、自身の都合に合わせたスケジュールを組めるなど、従前の会社の枠組みにとらわれない、自由と裁量が多い働き方が実現できる
  • 労働時間の制限がないため、働けば働くほど収入も増え、働きが報われる
  • スキルアップにかける費用などを経費計上でき、節税メリットと手取り収入の増加に繋がる

といった点がプラスの効果として挙げられる。実際、導入済の企業においては契約を切り替えた個人事業主の手取りが増えたり、新たな仕事が生み出されたりするなど、会社と働く側、双方にとって相乗効果が出ている事例もあるようだ。

今後、企業において「70歳までの雇用努力義務化」が進められることになっており、企業が採るべき選択肢の一つとして、「継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」が挙げられているので、この方法は定年後の雇用施策としても有効と考えられる。適正に運用されれば、これからの時代における新たな働き方として進展が期待できるはずだ。

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