米中戦争の火種にも。レアアース問題を新聞はどう報じてきたか?

 

2020年9月20日付
トランプ政権の科学政策に関する記事の中で、レアメタルの確保について次の記述。
「米政府の教訓になったのは日本だ。2010年に沖縄・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件などを機に、中国が希少金属の日本への輸出を制限し、価格が高騰するなど大きな影響が出た。トランプ大統領は17年、希少金属の確保を大統領令で指示した。リチウムイオン電池から回収する新技術の開発や、リサイクル関連企業の支援を強化したが、米商務省は19年6月の報告書で依然「経済や軍事上の潜在的な弱点」と懸念を示している。同年9月の米豪首脳会談でレアアースの安定的な供給体制を確認するなど、同盟国からの調達も進めており、中国依存からの脱却を図っている」とある。

*素直に読めば、「中国依存からの脱却」はうまくいっていないように思える。

2020年12月2日付
中国が「輸出管理法」を施行したとの記事の中で、次の記述。
「対象となる具体的な品目は公表されていないが、法律の規定では、安全保障にかかわる物品や技術、サービスで、関連データも含まれる。ソフトウェアの設計図や計算手順など中国が強みを持つ技術やハイテク製品の生産に欠かせないレアアース(希土類)などが対象になるとの見方がある」

2021年2月25日付
バイデン大統領が半導体など4品目の調達について大統領令に署名したとの記事中、次の記述。
「対象は〈1〉半導体〈2〉医薬品〈3〉レアアース(希土類)などの鉱物〈4〉電気自動車(EV)などの大容量電池の4品目。関係省庁に対し、100日以内に供給網の問題点を検証するよう求めた。同盟国と協力した調達先の多様化、国内生産の強化に向けた具体策を検討する」

2021年2月26日付
BS日テレの「真相NEWS」の内容についての記事。番組に出演したアジア経済研究所の江藤名保子副主任研究員が以下の発言。
「中国は(レアアースを)対立する米国をけん制するための政治カードとして使っている」としたあと、「レアアースは航空機や自動車などにも使われている。中国にとっても戦略物資として国内で管理すべきだとの考えもある」と発言。

●uttiiの眼

バイデン政権は「同盟国」を引き連れ、中国への依存度を小さくしようと、必死に「デカップリング」を試みているといったところか。レアアースにせよレアメタルにせよ、調達先を多様化することについては、若干可能性があるかもしれないが、それも限界がある。

一方、技術開発によって「脱レアアース」を図るのは相当な困難が伴うだろう。結局、軍事的な威圧を含む対抗措置を振りかざすことにもなりかねない。バイデン氏は「(米国の)民主主義と(中国の)専制主義の闘い」だとも言及しており、危険極まりない状況と言えるかもしれない。

image by:Ascannio / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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