米中戦争の火種にも。レアアース問題を新聞はどう報じてきたか?

 

2019年6月7日付
深刻化する米中貿易摩擦についての経済部デスクによる分析記事。「中国は、レアアースの対米輸出規制をほのめかし始めた。…レアアースとは、スカンジウムやイットリウムなど17種類の元素の総称だ。金属に少し混ぜるだけで、耐久性や耐熱性を高めることができ、強力な磁石の材料となるネオジムなど、ハイテク電子製品に欠かせないものが多い。世界の生産量の8割を中国が占めており、禁輸に踏み切れば、強力な報復手段となりえる。2010年、尖閣諸島を巡る問題で、中国はレアアースを禁輸し、日本の産業界を震え上がらせた。当時、世界のレアアース価格は100倍以上に高騰したという」と。

*記者は、2010年の再現を世界中が恐れているとしているが、同時に、中国がレアアースを武器にするのであれば、米国にも対抗手段があり、中国系企業や個人のドル決済を禁じることができるとの指摘。いずれも、「核兵器」に準えられるような強力な手段だと。

2020年3月28日付
政府は、補正予算で、中国など特定の国から日本あるいは東南アジア諸国に生産拠点を移転する企業に対し、整備費用の一部を補助する方針。記事タイトルは「脱中国依存に2000億円 政府方針…生産移す企業 補助」。この記事中、以下の記述。

「車や電機製品といった工業製品のメーカーのほか、国内流通の半分以上を中国から輸入していたマスクや、中国の鉱山で採掘され、ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)の関連企業なども補助対象となることが想定される」(その後、実際に、レアアースを扱う企業が対象になった模様)。

2020年8月13日付【独自記事】
記事のタイトルは「脱中国依存へ、レアメタル備蓄強化…鉱山開発・製錬の権益獲得も支援」。
「政府は、中国などからの輸入に依存しているレアメタル(希少金属)の安定供給を確保するため、備蓄体制の強化に乗り出す。日本企業による鉱山開発や製錬の権益獲得も後押しする。今後予測される電気自動車(EV)や次世代通信規格「5G」市場の拡大で、レアメタルの需要は急増が見込まれており、資源獲得競争の激化に備える」という。

*「レアメタル」は、17種のレアアース(希土類)を含む概念で、コバルト、リチウム、タングステン、マンガンなどを入れて34種類。「EVのモーター用磁石、半導体の電子部品の製造などに欠かせず、輸入が滞れば産業界にダメージをもたらすのは必至」というもの。政府の対応の中には「備蓄」も含まれていること。またレアメタルのなかには、アフリカで採掘され、中国で製錬されるものがある点も目の付け所のようだ。

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