外国人技能実習生は本当に“奴隷”か? 大手メディアが報じぬ真の実態

shutterstock_585728105
 

コロナ禍によって「外国人技能実習生」の来日が叶わず、日本のあらゆる現場で「人手不足」の声があがっているというニュースを昨今、目にすることがあります。一部の報道では「低賃金・重労働を強いている」という現代版・奴隷制度のような取り上げられ方をされる技能実習制度ですが、本当に報道されているような実態だけが真実なのでしょうか? メルマガ『ブラック企業アナリスト 新田 龍のブラック事件簿』の著者で働き方改革コンサルタントの新田龍さんは、外国人技能実習生について、メディアのセンセーショナルな報道と現場の実態が乖離していることを指摘。新田さんが明かす、真の現状とは?

【関連】日本の会社員が雇用の安定と引き換えに選んだ「ブラック労働」という悪夢
【関連】ブラック企業アナリストが暴露。日本人の給料が上がらない複雑な事情
【関連】正社員に「業務委託契約」への切り替えを強要するブラック企業の悪質な手口

ブラック企業アナリストの新田龍さんがさまざまな企業の実態を暴露!興味深い話が満載のメルマガ無料お試し読みはコチラ

 

外国人技能実習生は「低賃金・重労働の担い手」か? 技能実習制度の実態

北海道夕張市の名産品「夕張メロン」が、人手不足のため8万玉分の減産となる旨のニュースが先日「日本農業新聞」で報じられた。メロン農家はかねてより高齢化が進んでおり、慢性的な人手不足状態であったが、とくに今般の減産理由が「メロン栽培の主戦力であった、中国人の技能実習生がコロナ禍のため来日できなかった」ことである点が話題となっている。

夕張メロン 試練の季節 実習生不在、8万玉減産

本件については農家の苦境を憂うよりも、

「技能実習生が来日できないから減産ということは、『技能を習得してもらう』という主旨が建前でしかなく、実質的に技能実習生が単なる『低賃金・重労働の担い手』だと露呈しているのでは?」

「JA夕張市では日本人アルバイトも募集していたが、条件は北海道最低賃金の時給861円。真夏の重労働を最低賃金で募集して人が集まらず、『人手不足』などと言っていること自体がおかしい」

「農家だけの問題ではなく、同じような事象が食品生産加工、繊維縫製、製造業などでも起きている。これは事実上、低賃金労働者の移民制度だ」

などと厳しい意見のほうが多く見られた。では果たして、技能実習制度とはそんなに欺瞞に満ちた、問題を孕んだ制度なのか。また技能実習生に頼らざるを得ない事業主はいずれも努力不足で、「苦境に陥っているのは自己責任だ」と突き放してよいものなのだろうか。

日本人アルバイト時給 JA夕張市 営農推進課 求人情報

そもそも「技能実習制度」とは

我が国では1960年代から、外国人を受け入れて技能研修をおこなう形の外国人研修制度が存在していた。これはあくまで座学中心の研修であったが、1993年に現行の「技能実習制度」が創設されてからは、実習生は研修終了後、企業と雇用関係を結んだ「労働者」として生産活動に従事しつつ、実践的な技術を習得する形となった。当初は研修・技能実習の期間は合計で最長2年間だったが、1997年からは最長3年間に延長されている。

しかし、当初制度下では実習生に対して労働関係法令が適用されなかったため、賃金や時間外労働等に関するトラブルが多発。結果として2010年に法律が一部改正され、技能習得期間のうち実務に従事する期間中はすべて、労働法が適用される労働者として扱われることとなった。

その後2016年に技能実習生の保護に関する法律が施行され、技能実習の適正実施と技能実習生の保護を目的として「外国人技能実習機構」が設立された。技能実習計画を認可制、実習実施者を届出制、管理団体を許可制として、実習生に対する人権侵害行為への禁止規定を設け、違反には罰則が課されることが盛り込まれた。

現在、技能実習の対象となっているのは、農業関係、漁業関係、建設関係、食品製造関係、繊維・衣服関係、機械・金属関係、その他の合計85職種156作業で、受け入れ人数は一貫して増加傾向にある。

ブラック企業アナリストの新田龍さんがさまざまな企業の実態を暴露!興味深い話が満載のメルマガ無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 外国人技能実習生は本当に“奴隷”か? 大手メディアが報じぬ真の実態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け