世界中で日本だけ。4割の企業が「テレワークで生産性低下」の異常事態

 

実は、そこまで思い詰める必要はないように思います。というのは、問題の本質は日本語ではないからです。原因は2つあります。

1つは、日本の企業や官庁の仕事の進め方は、経験則を前提とした「自己流」で、各組織でバラバラだということです。

もう1つは、その自己流の進め方の中に「グレーゾーン」を抱えているということです。

特に、アドミ部門、つまり総務、経理、人事の仕事に顕著なのですが、普通、会社の総務、経理、人事などというのは、どの企業にも共通であるはずです。ですから、欧米やアジアでは会計学を専攻してCPA(公認会計士)などを取った人間をそのまま経理の実務に配置して、どんどん仕事を回してもらうようになっています。

総務の中のオフィス環境のインフラ管理とかは、専門の企業に外注することも多いですし、企業内のコミュニケーションなどはアプリの選定と、ハードソフトの管理で終わりです。人事に至っては、個別の採用権限は現場にありますし、給与計算は、例えばアメリカの場合はADPという企業に出退勤データをオンラインで送れば自動的にやってくれます。

ですが、日本の場合は何でも自前でやっています。どうしてかというと、自己流の仕事をしたいからです。

どうして自己流なのかというと、経験則しか信じないからですし、また経験則の塊である古株が権限を持ち、経験則に基づく自己流が最善だと信じているからです。現場はまだいいのです。製品開発や製造について、勿論、最先端を知ることは必要ですが、優秀な人材が管理職にいればそうしたことは自然にやっているし、最先端を取り入れていかねば競争に勝っていけません。

ですが、総務、経理、人事、経営管理といった部門の場合は、とにかく自己流が多いです。官庁もそうで、同じような業務をやっているので、全国で同じようにやればよく、従って処理の外注などもやればいいし、様式の統一もすればいいのですが、やはり経験則に縛られた自己流が続いている部分があると思います。

問題は、自己流なので各企業で実務が好き勝手にバラバラだということです。極端な話、用語まで違ったりします。状況を変えて良くすることを、ある会社では改善、ある会社では良化、ある会社では前進などと用語が違い、違うことを「社風」だとか「企業文化」などと自己満足して、中途入社の優秀な人材を「早く社風に馴染め」などといって潰すのが良い例です。

例えば、今でもそうかもしれませんが、日本の企業の経理部は大学などで会計学を学んだ学生を嫌います。「我が社の方法が優れているので、余計な色(先入観)のない人材がいい。半端に会計などやっていて、頭の固い(その企業の自己流の方法に批判的な)ヤツより、地頭(じあたま)の良いヤツの方がいい」というような感じです。

今はそんな贅沢はできなくなりましたが、バブル期には多くの企業が内部の人材を留学させてMBAを取らせたりしていました。そんなにMBA人材が欲しいのなら、MBA卒業生を採用すればいいのですが、日本企業は嫌っていました。通常は欧米やアジアの優秀なMBAというのは「最先端の実務ノウハウ」をその会社に「持ち込む」ことが期待されます。ですが、日本の場合は「冗談じゃない、俺たちの方法論が最善なんだ」という頭の悪い不平士族ですからダメだったのです。

この「自己流の経験則」至上主義があるために、若い社員は本当に細かなことについて、「先輩社員に尋ね、過去の文書を調べ」て、その「自己流ルール」に従っていかないと、実務が回らないのです。

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