世界中で日本だけ。4割の企業が「テレワークで生産性低下」の異常事態

 

ですが、仮にそうだとしても、スラックとかメールでもいいので、テレワークでもジャンジャン「その会社の自己流の方法論」とか、どうでもいいが、守らないとバッシングされる「前例」などを先輩に聞けばいいのです。

ところが、問題は、その「自己流」という中には必ず「グレーゾーン」があるということです。日本の社会というのは、理念の共有という発想はないので、全て実定法と判例で動いています。コモンセンスを共有して、実務はフレキシブルに判断というのができないのです。

そこでルールは非常に厳密にできています。ですが、実際は、そのルール通りに運用していては社会は回りません。ですから、ルールにはこう書いてあるが、実際の運用は違うという「グレーゾーン」があるのです。

また、形式主義というのも多いので、「本当はこうだが、形式をああすれば通ってしまうので、やってしまうし、実際にできてしまう」という実務もたくさんあります。役所と政治がバカなだけですが、制度を現実に合わせてもらうのは、面倒なので運用でしのぐということです。これも沢山あります。

中には、少し悪質なものもあります。企業の側では「本当はこの部分は課税されるが、国税も査察で見ないらしいので、いいや」とか、「本当はこの部分は、休日出勤で割増にしなくてはならないが、そうすると別のパートと処遇が逆転してマネジメントが面倒になるし、昔からこうしてきたので、バレなければいいや」といった話は、どの部署のどの実務の周りにもあると思います。

欧米の場合は、法人税については、多くの企業が当局と堂々と喧嘩することはありますが、それ以外の規制やルールに関しては、「おかしなルールなら直させる」ということを前提に、本当に今あるルールは守るという運用にできるだけ近づけるのが当たり前とされます。

もちろん、正しい意味での(形式主義ではない)コンプライアンスということでもそうですが、そうでなくては標準化できないからです。

ですが、日本の場合は、総務部の株主対応、経理部の費用認識・原価計算、人事部の給与計算など、「グレーゾーン」の業務が多いために、

「標準化できない。従って外注できない」

「文書に残せない。従って口頭伝承になる」

「バレると困る。従って非正規などの人には(企業の自己流価値観を最優先にしてくれないので)振れない」

ということになるわけです。実際に現場におられる方は、点検してみるといいと思います。キーワードは「自己流」と「グレーゾーン」です。この2つがなく、MBAの教科書通りに経営がされて、標準化された実務が既存アプリや外注サービスに乗せられるようなら、一体どのくらいの効率化になるのか、そしてこの2つがあるために、どうしても「テレワーク不能」になるというケースも洗い出してみたら良いと思います。

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