五輪ボランティアに“当て逃げ”疑惑。世界に露呈した組織委の常識欠如

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8月2日に発覚したボランティアの当て逃げ事故をはじめ、大会関係者の交通事故・違反が多発している東京五輪。なにがこのような事態を招いているのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、その理由として組織委員会の準備不足を挙げ、現場で起きているというトラブルの数々を紹介。さらに国際常識である「ボランティア保護の責任」の自覚なき組織委を厳しく批判しています。

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プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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五輪大会関係者の交通事故多発。日本の常識、世界の非常識

五輪開幕から先月29日までの大会関係者による交通事故が都内で75件、一時停止無視、進路変更などの交通違反が28件あったと報じられました。

さらに1日には、首都高で五輪ボランティアの男性が運転する大会関係車両が車2台にぶつかる事故を起こし、立ち去ったとされています。女性2人がけがをして搬送されたとされた一方で、運転手は「スタッフを送ることを優先した」と警察に話したそうです。

開幕ギリギリまですったもんだ続きだった東京五輪ですが、開幕後も「準備不足」によるすったもんだが次々と明るみになっています。

いったい延期した一年の間、組織委員会は何をやっていたのか。

ボランティアの人たちにワクチンも徹底していなければ、組織委が導入した輸送システムアプリも不具合だらけ。「当て逃げ」は言語道断ですが、組織委は「運転手が足りない」と多くのボランティア応募者に伝え、「カーナビに従うだけなので大丈夫」と説明していたそうです。

ところが蓋をあけてみれば、目的地に到着する前にルート案内が終了したり、ルートが勝手に変わったりするトラブルが多発。そこで運転手の人たちは地図で行き先などを確認し、運行しているため行き先変更や待機時間などの細かい指示が伝わらず、別の目的地に選手を運んだり、選手の滞在先にバスが来なかったりする事態が起きているそうです。

んったく。アプリ一つ作れないってどうなってるんでしょうか。思い起こせば厚労省のコロナ接触アプリも全く使い物になりませんでした。

そもそも運転をする人ならわかると思いますが、首都高は乗り慣れた人でないと「えっとどの車線だっけ?」ってなりますし、競技場や選手村のあるお台場周辺もなかなか難しい。ましてや「大会関係者を乗せてる」という緊張感から注意散漫になって当たり前です。

アプリを渡して「一つよろしく!」でできるほど、「運転」って簡単じゃない。一歩間違えば車は「凶器」です。ケガをした女性2人が大事に至らないことを祈るばかりです。

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