すべては米国の「お芝居」か。アフガン首都陥落と自爆テロに残る“疑念”

 

そして、2つ目の理由が【欧米が去った後、登場するパトロンの登場】です。

そのパトロンとは、中国とロシアです。これまでの支援継続という当てが外れ、大混乱・パニックに陥りそうなところに、迅速に“手を差し伸べて”くるのが中国とロシア、そしてトルコです。

比較的脆弱で、安定しているとは言えない国々がどうして中国やロシアを好むかと言えば、欧米諸国や国際機関のように、支援のための条件をあれこれ押し付けてこないことが理由の1つにあると思われます。

通貨危機・経済危機時によく問題視されたIMFのConditionalityなどがそれにあたりますが、中国などは「ビジネスはあくまでもビジネス。それは財政も同じ。国内の情勢や政治には口は出さない」という姿勢で支援を行おうとします。ただし、ここには大きなBUTがつき、「麻薬を中国やロシアに流さないこと」や「中国やロシア、トルコの国内問題化している反政府組織やテロ組織を支援しないこと」という条件が付与されます。

中国にとってはETIM(もともとは新疆ウイグル自治区出身の過激派)が混乱に乗じてアフガニスタンでISISなどと組み、勢力を拡大して新疆ウイグル自治区になだれ込んでくるのを阻止するという絶対的な条件があります。

ロシアにとっては、ウズベキスタンやカザフスタンという親ロシアの国々の情勢を不安定化させないこと、という条件が付きますし、ロシア国内のイスラム過激派と連携することがないようにとの条件も付きます。

そして、トルコに至っては、一旦はアメリカなきアフガニスタンにトルコ軍を治安部隊として駐留させることを検討しましたが、その一番の理由は、中ロとよく似た理由で、国内で抱えるクルド人問題に対し、新生アフガニスタンがちょっかいを出さないことだと思われます。米軍なきアフガニスタンの治安維持を通じてプレゼンスを拡大したいという思惑(注:ナゴルノカラバフ紛争への積極介入は、中央アジアへの勢力拡大が理由の1つです)が、やはりテロの流入を自ら抑えたいというのが主な理由だったようです。

ここに同じく“隣国”のイランが加わり、反欧米の地域が中央アジアに出来上がることになるという点も要注目でしょう。特にライシ氏が大統領に就任し、アメリカおよび欧州各国との対決姿勢が鮮明になってきていますが、アフガニスタンから米軍と欧州軍がいなくなったことで、イスラエル軍とアフガニスタンにいた米軍との挟み撃ちという最悪のシナリオは消えることになります。

そこに“スタン系”の国々が挙って加わり、アフガニスタンの安定にコミットすることで、自国への不安定要素の侵入を防ぎ、難民の流入を抑えたいという思惑が働いています。

難民については、カブール陥落以降、タリバンによる迫害を恐れるアフガニスタンの人々がトルコやスタン系の国々にすでに押し寄せ、各国での受け入れの限界に来ていますが、トルコについては、この難民の流入問題を、シリア難民の時と同じく、欧州各国に対する取引材料として使うという側面が見えてきました。

「アフガニスタンからの難民を今、何とか受け入れて留め置いているが、トルコ批判を続けるのであれば、国境を開放する」という“例”の脅しです。

スタン系については、欧米各国や国際機関からの支援引き出しのための材料に使っているようですが、すでに触れたとおり、スタン系は、程度の違いはありますが、基本的なスタンスはロシア・中国寄りと言えますので、欧米諸国が望むような“支援による勢力圏拡大”にはつながらないことも明白です。

そう、すでに中央アジアは、中ロに牽引される国家資本主義体制に組み込まれていると言えるかもしれません。そのラストピースだったのが、米軍などが駐留するアフガニスタンだったと言えるのです。

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