すべては米国の「お芝居」か。アフガン首都陥落と自爆テロに残る“疑念”

 

欧米諸国が次々とアフガニスタンから脱出するのをしり目に、中国とロシア、トルコ、そしてスタン系の皆さん、イラン、パキスタンなどが9月16日から、上海機構の会合を開催して、中央アジア、コーカサス、そして南アジアにまで広がる大きな勢力圏の結束を固めようとしています。

一見すれば、牽引するリーダー国が変わり、地域の安定度が高まったように思われますが、それを阻止する恐れがあるのが、3つ目の理由である【過激派組織の勢力拡大によるテロの拡大】の可能性です。

カブール陥落を受けて、欧米諸国が次々と自国民を退避させる中、米軍とタリバンによる検問と空港の警備を嘲笑うかのように、ISIS-Kがカブール国際空港周辺で大規模な自爆テロをやってのけてしまいました。

撤退を前にした米軍兵士20名弱と数百名ともいわれるアフガニスタン人(タリバン含む)を殺害したテロ事件は、反欧米勢力の復活という狼煙のみならず、アフガニスタンの統治権を掌握しようとしているタリバンへの挑戦とも考えられます。

このテロ事件の2週間ほど前、CNN特派員とのインタビューの様子が今週流されましたが、ISIS-Kのリーダーは「タリバンは異教徒の罰し方を知らず、口ばかりで手を下すことが出来ない」と批判し、「タリバンがリーダーシップを取るようでは、またアフガニスタンは大国に搾取されるだけ」とこき下ろしていました。

その脅しを有言実行したのかもしれませんが、このISIS-Kによる攻撃と勢力拡大に向けた宣言ともとれる自爆テロ攻撃で大きな不安と恐怖を覚えたのは、欧米諸国ではなく、タリバンとその仲間たち、そして中ロを始めとする“テロの流入を絶対に阻止したい”周辺国です。

アメリカとその友人たちがアフガニスタンを去った後の空白は、すぐに中国とロシアが埋めようとしているという現実に、待ったをかけるメッセージとも捉えられるかと思います。

言い方は悪いですが、国際情勢を分析するグループの間では、「中国はタリバンのアフガニスタンを完全に自国の財布のように変えようとしている。統治者や形態、そして人権状況にはあまり関心がなく、中国製品を購入する市場が成立するならばそれでOKというスタンスであるため、中国はアフガニスタンにコミットしない」というのが大方の見解です。

そしてロシアについては、「プーチン大統領が描く大ロシア帝国の復興のために、旧ソビエト連邦解体によってバラバラになってしまった中央アジア諸国を再度、ロシアの影響下に置き、かつて攻めきれなかったアフガニスタンもその輪の中に入れてしまいたい」という野望があり、そのためにタリバンを親ロシア化しようと試みています。

中ロは国家資本主義体制の盟友として協力はしますが、ロシアとしては、伸び続け、最近では差をつけられてバランスが取れなくなった中国が中央アジアに食指を伸ばすのを阻止したいとの思いも強く、そのために描くのが大ロシア帝国構想です。それは、中国の習近平国家主席が描く大中華勢力圏の創設(One China, One Asia)とも似ていますが、その両構想に、実はアフガニスタンは含まれています。

上海機構で囲い込み、まずは欧米諸国を地域から追い出すことで一大勢力圏を作ろうともくろんでいた矢先、ISIS-Kによる自爆テロが起こり、ムードが一転したようです。

テロ組織への共通対応が16日からの会合のアジェンダに加えられたのはそのような理由のようです。

今後のアフガニスタン情勢のイメージがなかなか見えて来ず、大きな懸念が積みあがってくる理由は大きく分けて上記3つですが、そんな中、タリバンはどのように対処しようとしているのでしょうか?

欧米による軍事的なコミットメントは今後ないことは明らかですが、様々なルートを使った外交的な攻撃と圧力は今後強化されるでしょう。

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