15年後だって構わない。Facebookが「メタバース」構築を目指すワケ

 

信長が茶道を奨励したわけ

ところで少し話が飛びますが、織田信長がなぜ茶道を「武士の嗜み」としてあれほど推し進めたかご存知ですか?もちろん、武人であっても文化の嗜みは必要という建前はあるのですが、実はその背景には経済的な理由もあったと言われています。

当初、戦国時代では武将が戦いに貢献するとそのご褒美に土地を分け与えるのが一般的でした。だから当然ですがとても優秀な武将にはたくさんの土地が分け与えられたわけです。ただ、困るのは「分け与えられる土地は有限」であること。もちろん織田信長などになればたくさんの領地をもってはいるものの、それを切り売り(売らないけど)していけばいつか分け与えられる土地がなくなり、武将たちのモチベーションが下がってしまう日が来ることは目に見えています。

また、多くの土地を分け与えた武将は力をつけて、いつか反旗を振りかざす日が来るかもしれません。そんな危険がある土地をあまり渡すことは、得策だとは言えませんね。

そこで信長は「茶道」を奨励し、その上で戦いに貢献した武将には「希少な茶器や茶碗」を与えることにしました。貴重な茶器や茶碗は、茶道を嗜む武士の中では高い価値をもち、時にはそれを高い値段でお金に換金することもできます。また希少な茶道具がのちに価値が上がって、さらに家宝としてのバリューが上がっていく場合もありました。

しかし、一方ではその「価値」を決めていたのは誰か?というと当然茶道の宗主である千利休ですし、それはつまりもっと言えばその最大のパトロンである信長であったわけです。茶道具は作ろうと思えば無限に作ることができます。また極端なことを言えば「これは価値があるものだ」と言えば(材料費に関係なく)どんなものでも突然貴重なものになるという、まさに「錬金術」なのです。

こうすることによって信長は実質的な価値のある土地を渡す代わりに、自分が定めた価値のある茶道具を分け与えるようになりました。もしかしたら「こんなのいらないよ」と思った武士もいたかもしれませんが「茶道は武士の嗜み」であったわけで、まさか「こんなの興味ないので土地をください」とも言えなかったのだろうと思います。こうして信長は「いくらでも価値を創り出せる錬金術」を千利休を通して手に入れたわけですね。

メタバースと茶道具

どうですか?なんかちょっとメタバースの話と似ていると思いませんか?メタバースを「みんなにとって価値のあるもの」に仕立てるのはすごく大変なことですし、お金もかかるでしょう。ただ、一度メタバースが浸透し、その中でみんなが「生活」するようになったら、その中での価値はまさに「作り放題」だといえます。

アクセスを制御してみんなが出会いやすい場所を作ることも可能ですし、そこであえて希少価値のある建物を作って分譲することもできます。海沿いの街が人気があれば「海」をそこに作ることも簡単ですし、建物を取り壊したり土地を改造するのも(実際にはデザインなどは必要ですが)指先1クリックで最も簡単にできてしまうのです。

もちろん、今までのように広告を扱って儲ける(空の上でも地面でも好きなところに広告が出せます)こともできるでしょうが、それよりももっと深いレベルでmetaはメタバースでの私たちの生活に関与し、極端なことを言えばその世界での経済も握ることができるわけですね。

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