日本が“我慢”することで世界に負けた。渋沢栄一が説く「道理ある希望」とは

 

先月、UTokyo Future TVというウェビナーのナビゲーターとして東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章先生と対談いたしました。長年のご努力が、2015年にノーベル物理学賞の受賞につながった学者の方です。無限の宇宙から降りかかっても、あまりに極小で何も反応せず、地球や我々の身体をすっと通り抜けて行くニュートリノという素粒子などに関する研究の第一人者です。

誰も見えないものをつかみに行くことをライフワークとして掲げていらっしゃる、その原動力についてご質問したところ、先生のお答えは「ただ知りたいという純粋な気持ち」でした。

また、その「純粋な気持ち」を支える環境に恵まれたことが世界級の成果へとつながったという示唆も重要であると感じました。

言い換えると、研究者の「純粋な気持ち」を発揮できない環境を放置すれば、将来のノーベル賞日本人受賞者の数は、日本の競争力と共に世界から転げ落ちる一方になるという警告でもあります。

現に、2021年のノーベル物理学賞を受賞された眞鍋淑郎先生が、日本ではなくアメリカに研究および生活拠点を置かれている理由は、この「純粋な気持ち」を発揮できる環境をお選びになったからでしょう。

学生たちが就活で企業に失望するのは、同じく、この「純粋な気持ち」を支え、育んで、成長させてくれる環境がなかなか見つからないということではないでしょうか。

「そんなきれいごとで食っていけるか」と切り捨てる前に、「純粋な気持ち」を発揮することを抑え込み我慢することが、日本企業の世界における競争力や存在感につながっていないこの数十年間の現実を直視すべきではないでしょうか。

食っていけることは生活で確保しなければならない最低限ですが、そもそも先進国であり文化国である日本において、「純粋な気持ち」を価値に転換できることこそが新しい時代に求められる道理ある企業です。道理ある企業とは、希望ある企業です。

このような希望を持ちながら、2022年を迎えたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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