未だ米軍占領下。自民党が「日米地位協定」を見直そうともせぬ深刻な現実

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これまでも在日米軍人らによる犯罪が発生するたびに問題となってきたものの、見直されることなく放置されてきたと言っても過言ではない日米地位協定。そんな「不平等条約」が今、米軍基地からのオミクロン株の流出という形で国民を危険にさらしています。なぜ政府は地位協定の改定にここまで後ろ向きなのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党の成り立ちにまで時を遡りつつ、この協定が覆りようがない理由を解説しています。

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自民党政権に日米地位協定見直しができない理由

米軍基地が所在する自治体の首長や野党から、日米地位協定の見直しを求める声があがっている。協定のおかげで米軍関係者とその家族は日本の検疫を受けずに入国できるため、沖縄県をはじめ各地の米軍基地で新型コロナウイルス「オミクロン株」のクラスターが発生し、基地から市街に“染み出し”ているからだ。

日米地位協定9条2項にはこうある。

合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。

これが根拠となり、米軍関係者ならフリーパスで日本の基地に飛行機で降り立ち、そのまま市街に出ることができる。

オミクロン株の出現を受けて岸田首相は昨年11月29日、「外国人の入国について、11月30日午前0時より全世界を対象に禁止する」ときっぱり宣言したが、この水際対策に大きな穴があいていることはすぐに明らかになった。

米国では12月1日に初めてオミクロン株の感染者が発見されて以降、急速に感染が広がった。米軍関係者は日本への出発前、到着後とも、ろくに検査を受けず、到着後の待機隔離もいい加減だった。基地内では日本人スタッフも働いている。米軍基地が発生源になる条件はそろっていた。

本来なら、政府は米軍に感染対策を徹底するよう確約を取るべきであっただろう。少なくとも、基地の外に出るときには、PCR検査で陰性を確認すべきだ。日米両政府は今年1月9日になって2週間の外出制限を打ち出したが、遅きに失した感は否めない。

米軍にしっかりとモノが言えない日本政府の体質の背景には、後述するような歴史的経緯もあるが、直接的には日米地位協定によるところが大きい。米軍のいわば“治外法権”を認めた内容のため、独立国であるはずの日本の地位を属国のごとく貶め、米側が日本政府を甘く見る原因になっている。

それゆえ、地位協定の見直しはこれからの課題ではあるのだが、それを自民党政権が米側に提起できるだろうかと考えると、絶望的な気分になる。なにしろ、日米安保条約に基づく取り決めなのだ。

岸田首相は日米地位協定について「改定は考えていない」「現実的に対応するのが大事だ」と語り、全くやる気はない様子である。もし、見直しを申し入れたら、国防総省を中心に米政府が反発するのは目に見えている。

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