ホンダに「覚悟」はあるか?ソニーと提携し成功するために今すぐすべきこと

 

私がホンダの経営者であれば、Drivemodeのチームは、全員新会社に移籍し、同時に、ソニーにはモビリティ・サービス・チームを新会社に移籍させてもらい、新会社を「ソフトウェアのDNA」を持った会社として、将来のホンダを託すぐらいの気持ちで立ち上げます。逆に、Drivemodeチームはホンダ本体に残し、電気自動車も新会社だけでなく、ホンダ本体からも出す、みたいな中途半端なことをすると、この事業は失敗すると思います。

これはトヨタ自動車にも言える話ですが、昔ながらの「ハードウェア・カルチャー」を持った会社を、「ソフトウェア・カルチャー」の会社に変革させることは、ほぼ不可能です。これまでの会社の成長に大きな貢献をしてくれた人たちが抵抗勢力となった時に、それを抑えることが出来る経営者はいないし、ましてや彼らを積極的にリストラすることなど不可能です。

つまり、ホンダにとっては、ソニーと合弁で作る新会社こそがホンダの将来を担う存在であり、今のホンダは、そしてそこにある旧態依然とした「ハードウェア・カルチャー」は、内燃機関車とともに徐々に衰退していく存在であって良いのです。

こんなことを言うと、昔からのホンダのファンには叱られそうですが、それが正しい形の「企業の新陳代謝」なのです。これまで日本社会はそんな形の「ドライな企業の新陳代謝」を嫌って来ましたが、それこそが「失われた20年・30年」を作り出した根本原因であることを再認識すべきなのです。

それぐらいの覚悟がホンダの経営陣にあれば、今回の提携には大いに期待出来ると思います。発売が2025年とかなり先なことが心配ですが、そのころでも電気自動車のシェアは世界全体では20~30%程度でしょうから、決して遅くはありません。

私が二十代のソフトウェア・エンジニアであれば、トヨタ自動車やホンダで働くことには全く魅力は感じませんが、この新会社には大きな魅力を感じます。上に書いたカルチャーの問題もあるし、会社の伸び代が大きいのでストックオプションに大きなポテンシャルがあるからです(ちなみに、日本の大企業でしか働いたことがない人には、この違いが全く理解出来ないのが、一番の問題です)。

優秀なソフトウェア・エンジニアを集め、Teslaに技術力でもブランド力でも負けない会社を是非とも作っていただきたいと思います。

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image by:VanderWolf Images/Shutterstock.com

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