ウクライナとロシアの紛争。日本人として何を考えればいいのか?

 

ミンスク合意をもし進めていたら?

例えば、ロシア通の元外交官作家、 佐藤 優さん は、侵攻が始まる前から、 プーチン大統領の思惑 について語っていました。曰く、 ロシアの多くの人たちは、ウクライナ東部に住む人々を同胞 だと考えており、 その人たちを見捨てれば、政治的にプーチン大統領が非難され、政治的に危うくなる というのです。また、ウクライナの前大統領と締結した 「ミンスク合意」 についても、佐藤さんの説明で知りました。 その合意を守れば紛争を回避できるとも進言 していました。

ウクライナ情勢、解決の鍵を握る”ミンスク合意”を佐藤優が解説

今はヒーローのように扱われている ゼレンスキー大統領ですが、今回の紛争を回避する道もあった のではないでしょうか? 国内でのロシア語の使用などを認める など譲歩しながら、 ミンスク合意を粛々と進めつつ親ロシア派の過激派をロシア軍で抑えて欲しい と頼むこともできたはずです。

NATO加盟という劇薬の是非

ところが、ゼレンスキー大統領は、前大統領が認めた 「ミンスク合意」を無視 するどころか、 NATOに加盟 すると言い出したわけですから、 プーチン大統領ならずともロシアの要人は強烈な危機感を抱いた でしょう。おそらく、 ウクライナとロシアの国境付近に核ミサイルが並ぶ光景 が想起されたはずです。

ここで思い出すのは、 第三次世界大戦勃発寸前だったキューバ危機 です。旧ソ連の フルシチョフ第一書記 が、 キューバに核ミサイルを配備しようという時に、米国のケネディ大統領が英断して回避した という事件です。

キューバ危機:ケネディ大統領全米放送

もしも、私が、ウクライナの大統領で、 善良な市民の平和を守ることを第一 にするなら、 NATOに加盟して、EU諸国の盾になる選択をせず に、 ミンスク合意を執行する引き換えに、内戦の鎮圧とウクライナの他国からの保護など 、 いくつかの要求をロシアに したでしょう。もっとも、そんな 生ぬるい公約を訴えたところで 、人心をつかむのがうまい元コメディアンの大統領に、 ウクライナの選挙で勝てるわけはありませんが。

みなさんは、 スウェーデンやフィンランドが、ロシアとの外交上の判断でNATOに加盟していない のはご存じでしょうか。 歴史的にロシアや旧ソ連に侵略されてきた両国ですが、あえて東西の陣営から適度に距離を置いてバランスを取ることで、平和を維持しよう としているわけです。つい先日も スウェーデンのアンデション首相が、NATO加盟に否定的な声明 を発表しました。

他国を間に挟み、さらに海を隔てている同国でさえ、こうした 高度な外交術でバランスを取っている のですから、 国境を接しているウクライナが、一気に西側に歩みよればどうなるか、想像に難くありません。

スウェーデン首相、NATO加盟に否定的 「欧州一段と不安定に」

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