プーチン退陣は必至。ロシア「惨めなまでの敗北」の後に待つ不安な国際情勢

 

唯一、これまでのケースとの違いは、NATOおよびアメリカは、“独裁政権に苦しめられる哀れな市民”を救うために介入したと主張してきたことに対し、強大な隣国に侵攻された哀れな国民を救い、ウクライナの政府のすげ替えではないことでしょうか。

恐らく唯一類似しているのは、サダムフセインのイラクが隣国クウェートに侵攻した際に、挙ってイラク軍を叩きに行き、イラクに思い制裁を課した“あの”ケースぐらいでしょう。

「困ったときはお互い様」という精神から、戦時下にあり、悲劇的な状況にいる一般市民を助けるということは100%サポートします。

現在、戦時下という状況の下、大量の武器が供与されていますが、実際、ほとんどはどこに流れているか追跡できないことをご存じでしょうか?そしてこれまでアメリカなどが、自国の外交安全保障政策の理由でばらまいてきた武器弾薬が今、欧米に対して牙をむいている状況をどこまで意識しているでしょうか?

ウクライナ情勢が“落ち着いたとき”、これらがもしかしたら火を噴く可能性は否定できません。そしてその結果、国際的な非難の矛先が、今度はウクライナに向くことになりかねません。

これまでのところ、日本からはもろもろの制約のおかげで、重火器や武器弾薬の供与は行っていませんので、自ら提供したものが自らに対して火を噴くことはないですが、これまでの国際紛争時と異なり、はっきりとG7(欧米)と足並みを揃え、ロシアへの制裁を強化し、挙って支援額を積み増している日本政府を待つ状況は予測できません(ウクライナ外務省からのThank you noteに日本の名前が当初なかったことで、大騒ぎになるような状況ですから、恩を仇で返されたと意識するような事態になったらどうなるでしょうか?)。

ここであえて逆サイドも見てみましょう。

仮にNATOおよび欧米諸国が予測するように、「ロシアが惨めなまでに敗北することになる」としたら、どのような情勢が待つでしょうか?

プーチン大統領の退陣は必至として、国際社会はプーチン大統領がいなくなったロシアに「喧嘩両成敗」とでも宣言して、戦後復興に、対ウクライナと同じ熱量で、乗り出してくるでしょうか?

私自身も含め、それは非常に疑わしいのではないかと思います。

何らかの形で、ウクライナ戦争が決着し、国際社会の目が“その後”に向かうとき、私たちの目は、関心は、自らの日常を襲っている様々な問題に一気に注がれることになります。

コロナのパンデミックで混乱した国際経済と国内の雇用。100%までは戻らないと言われる観光産業。ポスト・コロナが語り始められた矢先、勃発したウクライナ戦争(ウクライナへのロシアによる侵攻)と、欧米諸国主導で発動・強化される対ロ金融・経済制裁の副作用として起こる調達不安と物価上昇。国際的なサプライチェーンが麻痺してしまい、なかなか適応できない各国。ドラギ首相(イタリア)が国民に問うたように「平和かこの夏のエアコンか」という究極の選択への“本当の答え”。

これらの問いや問題への疑問と違和感が、戦争が決着した途端、現実のものとして私たち一人一人に突き付けられた時、どのような反応を私たちは示すのでしょうか?

ウクライナ戦争はまだまだ長期化すると思われますが、それでもいつか、何らかの形で終わりを迎えることになります。

その時、私たちが住む世界はどうなっているのでしょうか?その時、日々、メディアを賑わせてきたウクライナ情勢に対して、私たちはどれだけの熱量を注ぎ込み、支援を提供するのでしょうか?そして、その時、日本が位置する北東アジア情勢はどうなっているのでしょうか?今回の戦争で“敗者”となった側は、今後どのような立ち位置を得るのでしょうか?

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