「情報の非対称性」で相談者が損をする
さらに、相談者側は、よくわからないから相談をするわけですが、販売側は、保険の情報をたくさん持っています。すると販売側は、売りたい商品について、説明をいろいろしてくれますが、不利な情報というのは相談者に伝えないということがあります。これを「情報の非対称性」といいます。
たとえば、売りたい商品よりも、扱っていない他の商品の方が保険料は安く、保障内容がよいとしても、そういった情報は、相談者に伝えません。
さて、金融庁が2021年に、保険会社向けの監督指針を改正しました。その中で公的保険の適切な説明をするよう保険会社に指示をしています。
これは「保険を販売するときには、公的医療保険や遺族年金などの公的な保障もあることを説明しなさい」ということです。これも「情報の非対称性」にあたります。販売側にとって不利な情報も出すようにということです。そうしないと相談者が損をすることにつながるからです。
投資信託などの金融商品も同じで「利益相反」の関係
保険の例を出しましたが、他の金融商品でも同じです。
つぎに、銀行の窓口を例にとりましょう。
銀行で取り扱っている投資信託の商品は、どれも販売手数料が高く、信託報酬が高いものばかりです。それは銀行にとって、手数料が多く入ってきますので「よい商品」になります。
しかし、相談者(顧客)にとっての「よい商品」とは、販売手数料が低くて、信託報酬が安い商品です。
これも「利益相反」の関係です。もちろん、銀行の窓口では、ネット証券などで扱っている投資信託の方が、手数料が安くて信託報酬も安いなんて教えてくれません。
ここにも「情報の非対称性」が存在します。
銀行の窓口で相談をすると「損」するということですね。
有料相談であっても商品を売っていると公平中立とは言えない
では、有料相談ならば安心ができるのか?ということになりますが、これもちょっと微妙です。
たとえ有料相談であっても、保険を販売していたり、金融商品の販売をしている場合は注意が必要です。
たしかに、クライアントは相談者になり、相談者に寄り添った形でもアドバイスを受けることができるのですが、販売をしているということは、販売手数料も受け取っているのです。つまりクライアントは両方になるということです。ですので、100%公平中立とは言えません。
それだと「利益相反」が、残っていると言うことになります。
中立公平な相談ができる場所は?
本当に公平中立なアドバイスは、有料の相談で、かつ商品の販売していない人になります。じつは、とても数が少ないのですが、相談のフィーだけで仕事をしている人は存在します。
筆者の知り合いにも何人かいますし、一部のFPでもそういった活動をしています。たとえば「みんなのお金アドバイザー協会」や「FP技能士会」などは、商品販売に頼らず相談料を中心として、中立公平なアドバイスを指針に掲げているところです。
残念ながら今のところ希少ですが、もっと増えていくことを期待しています。