悪玉コレステロールは高くても問題なし。むしろ“長生き”の可能性

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コレステロールが人間の健康に与える影響について、日本動脈硬化学会と日本脂質栄養学会の主張が対立しているのをご存知でしょうか。特にLDL(悪玉)コレステロールについては、寿命を縮める“悪”とする主張とそれを否定する主張があり、論争を招いています。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では、医師で糖質制限食の提唱者である江部康二先生が、数多くの研究から「高齢者において、LDLコレステロールと死亡率の関係は、ないか、逆相関」と結論付けた信頼できるレビューを紹介。「コレステロールが高いほど長生き」とする主張の正しさの証しとしています。

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LDLコレステロールが高いほど総死亡率が低い

以前、ブリティッシュメディカルジャーナル(BMJ)に掲載された、「LDLコレステロールが高いほど総死亡率が低い」という結論の論文を考察しましょう。以下はその要約です。

[目的]

高齢者において、総コレステロールは、総死亡率と心血管死との関係において、リスクとならないか少ないという研究は多いが、LDLコレステロールと総死亡率との関係を調べた研究は報告されていない。そこで、この論点を調査した。

[セッティング、参加者、アウトカム、評価]

一般集団で60歳以上の人で、LDLコレステロールが総死亡および/または心血管死亡のリスク要因として調査されたコホート研究を、PubMedで調査した。

[結果]

我々は、総死亡率が記録された28のコホート、心血管死亡率が記録された9つのコホート、において合計68,094人の高齢者による、30のコホートを含む、19のコホート研究を確認した。

総死亡率とLDLコレステロールとの逆相関は、この関連が記録された参加者の数の92%に相当する16のコホート(統計的有意差を有する14コホートを含む)において見られた。残りには、関連が見つからなかった。

2つのコホートにおいて、心血管死亡率は、LDLコレステロール値が最低の四分位で最も高く、統計的に有意であった。7つのコホートにおいて、関連は見出されなかった。

[結論]

高LDL-Cは、60歳以上の大部分の人々の死亡率と逆相関する。この知見は、コレステロール仮説(すなわち、コレステロール、特にLDLコレステロールは本質的にアテロームを発生させる)と矛盾する。高LDL-C高齢者は低LDL-C高齢者よりも長く生存するという、我々の分析はコレステロール仮説の妥当性を疑う理由を提供する。

さらに、我々の研究は、心血管疾患予防戦略の一要素として高齢者におけるLDL-Cの薬理学的減少を推奨するガイドライン再評価の根拠を提供する。

●全文:BMJ Open │ Lack of an association or an inverse association between low-densitylipoprotein cholesterol and mortality in the elderly: a systematic review(PDFファイルが開きます)

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