下村博文氏「激怒」の何サマ。統一教会からの陳情を認めない元文科相の厚顔無恥

 

家庭教育支援法案は、安倍氏が会長となり2012年4月に発足させた「親学推進議員連盟」が立法化をめざしていたものだ。安倍政権下の2017年、与党がこの法案をまとめたが、「家庭教育への公権力の介入を招く」などと野党が反発し、棚上げにされている。

家庭教育を支援するという字面だけみると結構な政策だと勘違いしやすい。しかし、ベースにあるのは戦前の家族観、教育観だ。たとえば、母親は家にいて子供の教育に責任を持つべきで、そのための支援を国や地方行政が進めるというような。

いじめ・虐待・不登校・発達障害など、子どもが直面する問題はすべて、親、とりわけ母親の愛情が不足しているからだという、ものの見方だ。

社会学者、木村涼子氏はこう指摘する。「家庭教育支援法案は、第一次安倍政権時の2006年に改正された教育基本法に依拠している。議論を呼ぶ新たなキーワードがちりばめられた5項目にわたる条文が『教育の目標』として掲げられた。それらは〈のぞまれる国民〉を規定するものであり、家庭も学校も〈子どもをそのように育てる〉責務を、子どもの側は〈そのように育たねばならない〉という課題を負わされたことになる」(imidasより)

2023年度に創設される予定の「こども庁」の名称が、自民党内の右派議員らの反対によって「こども家庭庁」に改められた背景に、「家庭教育支援法案」と同じ考え方があるのは明らかだ。子どもの権利よりも親の責任の重視。国家による家庭教育の統制。その方向に進んだとして、独創性ゆたかな人材が育つだろうか。

法律が棚上げにされた一方で、地方自治体では「家庭教育支援条例」を制定する動きが徐々に広がっている。今年9月3日時点で、10の都道府県、6の市町村が同条例を設けている。

国に「家庭教育支援法」を求める議決も自治体の議会で相次いだ。その背後に、統一教会による陳情攻勢があったことが明らかになっている。たとえば、東京新聞(9月3日)のこの報道。

川崎市議会が2018年に可決した「家庭教育支援法の制定を求める意見書」に関し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体関係者が自民市議に意見書案の提出を働きかけていたことが分かった。神奈川県内では同じ時期、計23の市町村議会に同様の意見書を求める陳情が出され、同じ団体関係者が一部に関与していたことが判明。教団の価値観と親和性がある政策を、地方政治を通じて後押ししている実態が浮かんだ。

統一教会関連団体の陳情書は、「家庭教育を推進する神奈川県民の会」の名のもとに出されたもので、以下のような文章からはじまる。

今日、核家族化の進行、地域社会の絆の希薄化など、家庭を巡る社会的な変化には著しいものがあります。そのため、過保護、過干渉、放任など、家庭教育力の低下が強く指摘されるようになり、極めて憂慮するところとなっております。

この陳情とほぼ同じ内容の「意見書」は2017年から今年8月までに、神奈川県内だけでなく香川県議会、金沢市議会など全国計34議会から衆参両院あてに提出されている。

伝統的な家庭観への回帰をめざす運動は男女共同参画社会基本法が制定されて以降に盛り上がり、2000年代前半には「ジェンダーフリー・バッシング」が全国で吹き荒れた。

「男は仕事、女は家庭」「料理は女がやるもの」といった性による社会的・文化的な差別をなくそうというのがジェンダーフリーだが、それに反対する運動体は「共産主義者が暴力革命の代替手段として性別秩序の解体をめざしている」「共産主義者は青少年の堕落を誘うべく過激な性教育論を学校に持ち込んだ」などとして、攻撃を続けた。その中核となったのが日本会議と統一教会だ。

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