統一教会と自民議員が交わした悪魔の契約。「推薦確認書」が炙り出す戦後日本の大問題

2022.10.27
 

改憲の最大の焦点・9条が含まれる第二章は、章の名前が現行憲法の「戦争の放棄」から「安全保障」に変更されている。条文に「戦争を放棄し」という言葉は残っているが、その直後に「自衛権の発動を妨げるものではない」と、わざわざ追加されている。この後に挿入された「国防軍の設置」については、これまでも散々指摘されている通りだ。

しかも安倍政権は「憲法を改正し、新憲法に基づき安全保障体制を強化する」という当たり前の手順すら踏もうとしなかった。2014年、現行憲法で認められていない「集団的自衛権の行使容認」を、憲法改正どころか国会での議論もなく、閣議決定で解釈を変更。翌年「後付け」の形で安全保障基本法を制定したことは、記憶に新しい。

そして岸田文雄首相は今「防衛力を抜本的に強化する」と繰り返し、政府の国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画(中期防)のいわゆる「安保3文書」の改訂に前のめりになっている。

憲法改正といえば、もう一つ「緊急事態条項の創設」(自民党改憲草案第98、99条)に大きな焦点が当たっている。緊急事態が生じた時に、首相が緊急事態宣言を発すれば「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」ようにする、という内容だ。

緊急事態条項ができれば、政府は緊急時に国会の監視を受けることなく、法律を制定するのと同等の権力を手にする。政府に多大な権力が集中し、国会を無力化できる。国権の最高機関たる国会を無力化するということは、つまり憲法の「国民主権」を骨抜きにするのと同義である。

推薦確認書の2項目め「家庭教育支援法の制定」も、自民党の改憲草案と深くかかわっている。

改憲草案の第24条には「家族は、互いに助け合わなければならない」との文言が挿入されている。ここには、大きく分けて二つの問題がある。

一つは、家庭への公権力の介入だ。家族の助け合い自体を全否定するものではないが、それを国家が憲法に書き込み、まるで国民の行動規範のように示すことには、強い違和感を抱く。行政が積極的に家庭教育に介入し、国家が考える「あるべき家族像」を押しつけようとしている、との懸念が後を絶たない。

名前こそ家庭への「支援」だが、子育てに悩む親世代を、個別の事情に合わせてサポートするという方向性ではない。家庭教育支援法に先行するかのように地方自治体で次々と制定されている家庭教育支援条例を見れば、方向性はむしろ逆で、国家にとって好ましい子供を家庭において育て上げるよう、親世代に責任を負わせる狙いが垣間見える。

もう一つはセーフティーネットの家族への押しつけだ。分かりやすいのが菅義偉前政権だが、少子高齢化で社会保障費が膨れ上がるなか、菅氏は「自助、共助、公助、そして絆」なるスローガンで、国民に自己責任を強いる考えを示した。

介護保険制度の創設や民主党政権の子ども手当など、古くから家庭内の問題とされていた介護や子育ての「社会化」を目指してきた従来の流れを否定し、それどころかむしろ積極的に逆行させ、公助をやせ細らせるというわけだ。その責任を家庭(特に女性)に押しつけることになりかねない。

こうした問題を抱える「家庭教育支援法の制定」と、推薦確認書の3項目めに挙がった「『LGBT』問題、同性婚合法化に関しては慎重に」という項目を並べてみれば、現行憲法の第13条「すべて国民は、個人として尊重される」という「基本的人権の保障」をないがしろにしようとしているのは明らかだ。

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