クーデター発生の可能性も。“子飼い”で周辺を固めた習近平が抱える新たな火種

 

特に今回、李克強首相の後任として経済のかじ取りを任される李強氏(上海市総書記)は、ゼロコロナ対策の強い締め付けの結果、市民から直接罵声を浴びさせられるという失態を演じていますが、このエピソードは国民からの信頼度の低さと、国民の怒りのレベルの高さを示すものと言えるでしょう。

李強氏の総理就任は習近平氏の3期目のアキレス腱・時限爆弾とも言われており、経済対策の失敗は彼の失脚どころか、習近平体制の終焉と共青団などの勢力の復活によるパニックを生み出すことになるかもしれません。

そして今回、非常に不思議なのが、共産党大会が終わるやいなや、国営メディアも習近平国家主席の称賛のトーンを控えるか止めていますが、これは何を意味するのでしょうか?少し不穏な空気を感じざるを得ません。

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とはいえ、ついに念願の3期目を射止めた習近平国家主席と指導部は、今後、どのような外交を展開するのでしょうか?

これまで苦慮しつつも支え続けてきたプーチン大統領とロシアを、そして今年に入ってから弾道ミサイル発射を繰り返し、近々核実験を再開すると見られている金正恩と北朝鮮を、3期目を確定させたこれからも支え続け、台湾有事の際に備えて恩を売っておくのでしょうか?それともこれを機に見捨てるのでしょうか?

その答えは、よほどのサプライズが国内またはロシア・ウクライナなどで起きない限りは、そう遠くないうちに見えてくると思います。

では悪化の一途を辿り、なかなか緊張緩和のチャンスが見えて来ない対米戦略はどうでしょうか?

3期目に向けて国内の支持基盤固めと反対勢力の追い落としに邁進していたころは、反対派から「習近平国家主席は過度にアメリカとの緊張を高め、中国経済の成長率を下降させた」とか「これからアジアでの勢力圏、そしてパクスシニカ・パクスチャイナを築き上げようとしているときに、不用意に中国包囲網を形成させることになった」と非難されていたこともあり、しばらくは対立構造の明確化を控えていましたが、それもペロシ下院議長ほかの訪台を機に、国内での反米感情が高まったことで、対米強硬策が再度日の目を見ることになったと言われています。

すでに3期目を手中に収めた身としては、アメリカとの直接戦争というエスカレーションさえ防ぐことが出来れば、自身の宿願である台湾併合の実現と、名実ともに世界最大の経済国の達成のためにアメリカとの緊張を高める作戦に出る可能性が指摘できます。

不安材料は、その対米強硬策と経済的な覇権の国際的な拡大の司令塔が、3期目の指導部に存在するか否かでしょう。

しかし、習近平指導部に対して今のところラッキーに働いているとすれば、対抗するアメリカが、中国を台湾海峡情勢などに対して非難を強めているとはいえ、実際には軍事的にも資金的にも、そして政治的にも、ロシアによるウクライナ侵攻に掛かり切りで、本格的に中国対応が出来ていない点でしょう。

それに気づいているのか、中国はまた着々と国家資本主義体制のエリアを広げる動きに出始めています。そのかじ取りは、今度政治委員となった王毅外相に託されるようで、赤い経済圏の拡大はしばらく続くものと思われます。

習近平国家主席の3期目、つまりこれからの5年間で、中国がどこまで勢力を伸ばすかは、実は「ウクライナにおける戦争がいつまで続くか」に大きく関わってきます。

習近平国家主席は実際にはプーチン大統領とロシアの行いを庇いきれないと感じていると言われていますが、ロシアによる無茶苦茶な行いは、同時に中国に勢力拡大のためのスペースと時間を提供しているという皮肉な現実が、ロシアとつかず離れずの態度を継続するという決断に至っているようです。

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