築地玉寿司4代目が創業100年目に起こした大革命。本店2階に“異端児”が込めた「3つの意味」

 

玉寿司伝統の教育的環境の象徴

「玉寿司大学」を継続することによってどのような効果が見られただろうか。4代目はこう語る。

「このような仕組みがなかった時代は、先輩に恵まれた人は良かったが、そうではない人は残念な経験をした。鉄は熱いうちに打てと言うが、本当に直な子たちに仕事についての考え方、技術を含めてキチンとしたものを教えると2年経たないうちに板前の免許を取得する」

「開校当初は社内の腕のいい板前さんがメイン講師を務めていたが、いまは1期生2期生が中心となっている。講師陣もちゃんと論理立てて教えることによって、自分自身のスキル向上につながっている」

「さらに『採用』の面で飛躍的に安定するようになった。当社にはきちんとした教育カリキュラムがあって成長する環境が整っていることを先方の進路指導の先生に説明すると、おすし屋さんを希望する生徒さんたちに薦めてくれる」

「築地玉寿司」のカウンター席で食事をしていると、20代そこそこの若い調理人が、先輩板前から指示を受けて仕事をしている光景を目の当たりにすることがある。実に清々しい気分に浸る。

玉寿司が創業100年目を記念する形でオープンした「鮨本店上ル」は、「復興の世界観」「ありがとうを伝える店」に加えて、このような「教育的環境の象徴」という意味が込められていると言えるだろう。

image by: 千葉哲幸
協力:株式会社玉寿司

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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