築地玉寿司4代目が創業100年目に起こした大革命。本店2階に“異端児”が込めた「3つの意味」

 

カリキュラムによって知識・技術を伝授

4代目が玉寿司を引き継いだのは2005年2月。しかしながら、当時の同社は経営判断の誤りによって「バブル」という時代の傷跡を背負っていた。

「私は会社が再生を果たす上でとにかく『良い会社』をつくりたいと考えた。社員が生き生きと働き仕事に誇りが持てる会社にしたいと。規模は大きくなくても筋肉質の会社。ともかく当社は脆弱だったので、ここを何年かけても強化していこうと。100年、150年の経営を見据えて取り組んできた。心のこもった一カンのおすしは廃れることがないという確信があった」

同社では「廻らないすし」にこだわりを持っている。こと氏をはじめとして先代が「若者を育てる」ということに熱心に取り組んでいたことが家訓のように浸透していた。

そこで4代目が考えたのは「玉寿司大学」。新入社員に板前としての基礎的な知識・技術を習得してもらうということ。この仕組みによってこれまでの属人的な形で知識・技術を教えるという不揃いな教育環境を封鎖できると考えた。

しかしながら、この「玉寿司大学」の仕組みは、新入社員に給料を払いながら学校に通わせるということから、4代目は「財務体質をよくしてからこれに取り掛かろう」と考えた。

果たして2017年「玉寿司大学」は開校した。以来、60人程度がここを卒業している。

「玉寿司大学」は一般的に2~3年かかる板前の基本を100日間で習得できるようにした

「玉寿司大学」は一般的に2~3年かかる板前の基本を100日間で習得できるようにした

同社の新卒は例年10人前後で、基本的に男女とも「調理師」として採用。「玉寿司大学」で身につけてもらうことは「技術力」「接客力」「人間力」で、一般的に2~3年かかる教育内容をカリキュラムに落とし込んで100日程度で習得できるようにしている。新卒生はみな柔軟であることから、これらを急速に習得していくという。

カリキュラム全体の100日間が終了し、検定試験が終了し、合格すると晴れて現場に出ることができる。その時はまだ一人前ではないが、仕込みをしたり、半戦力となる。さらに現場で仕事を覚えて、習熟していって、4つの検定試験を受ける。これらに合格すると一人前の板前として免許証をもらうことができる。

免許証をもらっても、まだ初心者マークがついているような状態。そこからは、自分が実際にカウンターに立って、実地で本当のお客に鍛えられていく。

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