日本のアパレルはもう死んでいる。今後「蘇生」する可能性は残されているのか?

 

振り袖や黒留袖は、デジタルプリントが増えています。デジタルプリントが増えると、手描き友禅、型染友禅の会社や職人は仕事がなくなります。イラストレーターがいれば、良いのです。

浴衣も大きな柱です。こちらは、仕立て上がりの商品が主力なので、着尺である必要はありません。洋服の生地(広幅)でも問題ありません。プリントの手法も、注染(ちゅうせん)だけでなく、スクリーン捺染、デジタルプリントが増えています。図案のデジタルデータを海外に転送すれば、現地でプリントして縫製することが可能です。

きもの業界は淘汰が進んでいますが、きものは持続可能です。きものを生産する技術がデジタル化すると、サプライチェーンはグローバルになります。しかし、日本人女性がどんな柄を好むかを考え、図案を作るのは日本人が行うことになるでしょう。これはきもの以外でも共通した課題です。ロリータファッションも日本で企画して中国で縫製するケースが増えています。

デジタル化の問題は、アナログ技術の衰退を招くことです。高度な技術がなくなっても、デジタルで代替えできる商品は存続します。ほとんどの消費者は困りません。そして、外国籍の企業も参入可能です。

問題は数百年、千年以上継承してきた技術を失って良いのかという日本文化、伝統工芸の問題です。税金や補助金で保護すれば良いという考えもありますが、これを行うと確実に技術は形骸化し、進化は止まります。やはり仕事を残さなければ技術は継承できないのです。

3.ガラパゴス的ニホンの魅力

グローバリズムは、世界は一つと考えます。世界共通のルール、世界共通の政府を理想にしています。国境もなくし、自由貿易を推進する。それがグローバリストの考えです。

一方で、世界の多様性を守るべきという考え方があります。世界を一つのものとして扱うのではなく、小さな単位に分割してそれぞれが自立する。国境は大切だし、国内産業の保護も大切です。こう考えるのはローカリストです。

グローバリストとローカリスト。どちらが正しくてどちらが間違っているということはありません。グローバルなライフスタイルもあれば、ローカルなライフスタイルもあります。一人の人間が場面によって演じ分けることもあります。

また、グローバルビジネスもあれば、ローカルビジネスもあります。グローバルだけでは、貧富の格差も生れるし、全ての人を幸せにすることはできません。そこにローカルが加わることで、適度な刺激が生まれ、多様な豊かさを実現します。

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