日本のアパレルはもう死んでいる。今後「蘇生」する可能性は残されているのか?

 

日本は西欧とは異なる独自の文化を持っており、「ガラパゴス」と言われることもありますが、西欧の観光客はそのガラパゴスに魅力を感じているようです。西欧文化と日本文化は全く対照的で異質な美意識を持っています。日本の建築、庭園、きもの、工芸、芸術などの全てに異質な美意識を見いだすことができるでしょう。そして、互いの文化を尊敬し合い、互いに刺激を受け、新鮮な感動を覚えます。

異質といっても、他人に迷惑をかけたり、他人の人権を侵害することではありません。平和な世界を愛するというグローバルな価値観は共通しています。

もし、日本が西欧文化一色で染められてしまったら、西欧人にとっても世界は単調なものになるでしょう。日本が独自の文化や美意識を持ち、独自のライフスタイルを実践していることは、世界に刺激を与え、世界が進化を続けることに役立っています。

それはファッションにもいえることです。70年代にパリの正統的なデザイナーであるサンローランと対照的に、ヒッピー文化とジャポニズムを打ち出した高田賢三がいたように。そして80年代に停滞していたパリのファッション業界にアバンギャルドな新風を巻き起こした川久保玲、山本耀司がいたように。日本の独自文化は西欧文化を刺激し、活力を与えてきたのです。

そう考えると、日本人デザイナーズブランドは今後とも、存在価値を失うことはないでしょう。

4.文化産業の一翼としてのファッション

パリは「オートクチュール」を伝統的な技術に支えられた芸術であり、文化であると考えています。同時に、ブランドビジネスの象徴でもあります。芸術、文化とビジネスが融合することで、持続可能となっています。

日本のファッションもビジネスの側面だけでなく、文化や芸術としての側面を重視するようになると思います。

ビジネスだけなら、日本オリジナルのファッションである必要はありません。アパレル業界の人は、ニューヨークのブランドでも、パリのブランドでも、イタリアのブランドでも売れればいいと考えています。ですから、売れそうなブランドとライセンス契約を結んでいるのです。そして、それがファッションビジネスの主流だと思っています。

実際に、海外ブランドが好きな顧客も存在します。しかし、そういう人はライセンスブランドではなく、本物のブランドを買えばいいのです。

一方で、日本独自のブランドを求めている、インバウンドや日本人も存在します。日本企業が果たすべき役割は、日本人デザイナー、日本オリジナルブランドを育成し、発展させることではないでしょうか。そしてヨーロッパとは異なるファッションビジネスをアジア中心に展開することではないでしょうか。

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