日本人には迎合せず。それでも“ガチ中華”の代表格「味坊集団」が人気のワケ

 

都心に出てきて人気が沸騰

味坊集団が注目されるようになった沿革を述べておこう。

梁氏が25年前日本で初めて開いた竹ノ塚のラーメン店でも、中国東北料理の象徴である羊肉料理も出していた。しかし「これを食べるお客は『これが中国料理なのか?』という感じの表情で、おいしいのかそうではないのかという反応はなかった」(梁氏)という。

その3年後に、神田に出店して「中国東北料理」の専門性を強くした。同店の場所が東京駅や大手町に近いことから中国に駐在経験がある人が多数訪れるようになり「中国とそのまんま同じだ」「なつかしい」というお客が来店するようになった。

その後、御徒町に出店するが、この店から若い女性客が増えた。日本風に味付けをした料理ではなく、中国東北料理そのままの味を「おいしい」と言う。

御徒町にある「老酒舗」。店舗づくりが中国東北地方の路地裏の雰囲気を醸している

御徒町にある「老酒舗」。店舗づくりが中国東北地方の路地裏の雰囲気を醸している

神田・御徒町界隈だけで営業していた当時に、遠方からのお客が多数見られた。羊肉料理には羊肉好きの人を引き付ける力があることを梁氏は確信した。東京の西方面は三軒茶屋に出店したのが最初だが、ここから代々木八幡、代々木上原といった住宅街にも出店するようになった。

東京の東、西と店舗を展開しているが、客層は変わらない。客単価は3,000円から5,000円となっているが、これは客層ではなく店舗のコンセプトに沿っているもの。

味坊集団に来店するお客のほとんどはワインと羊肉料理を目的としている。店内にはリーチインクーラーに価格を書いたフルボトルワインを入れていて、これらの中からお客様がその日の食事や気分に合ったワインを選んで食事をしている。

太古から人間に最も近しい家畜

味坊集団人気の背景には、近年急速に高まっている「羊肉人気」が挙げられる。

梁氏の場合、営業を始めた当初は羊肉の仕入れはとても難しかったという。これを扱う精肉業者は少なく、スーパーマーケットの精肉売り場では売っていなかった。それがいまでは普通に売られている。

味坊集団では羊肉をウエールズやアイスランドから輸入して、中国料理店向けの精肉業者に卸すという事業も行っている。ここで取り扱う量が2019年は100tであったが2023年には200tになるという。

都心で店舗を展開するようになってから味坊集団では羊肉串が人気となった。これを最初に食べてからいろいろな羊肉料理を楽しむというパターンが定着している。「香福味坊」ではこれを揚げ物にして、6本500円でメミューに入れている。また羊の丸焼きもアピールしていて宴会の際に必ず選ばれている。

「香福味坊」での羊の丸焼きが推しのメニュー。宴会に華を添える

「香福味坊」での羊の丸焼きが推しのメニュー。宴会に華を添える

羊肉人気が近年急速に高まっている背景について、羊肉愛好者の集まりである羊齧協会(ひつじかじりきょうかい)代表の菊池一弘氏はこう語る。

「羊肉が愛されている理由の一番は、人間に最も近しい家畜だから。肉、骨、皮、毛とすべて人々に恵みをもたらして捨てるところがない。だから太古の時代から人々は羊を育てて、移動するときには羊の群れを引き連れていった。そして、羊肉は宗教上のタブーはない」

「羊肉は近年良質の赤身肉として筋トレする人にとって重宝されている。羊肉は体を温める食べ物で、中国では冬に食べる料理で冷え性の女性におすすめ」

梁氏は羊肉の料理教室を統括することもある。これは一般の人よりも料理人に向けて行なうことが多かった。羊肉というと西洋料理やエスニック料理が連想されがちだが、日本料理の人も新しい食材として注目するようになっている。

print
いま読まれてます

  • 日本人には迎合せず。それでも“ガチ中華”の代表格「味坊集団」が人気のワケ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け