オッサンの街・新橋から中目黒へ進出。やきとん老舗が「秘伝のタレ」と“おしゃレトロ”で目指す繁盛店

2023.05.16
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サラリーマンの聖地・新橋で、55年もの間庶民の胃袋を満たし続けてきたやきとんの老舗「まこちゃん」が今、若者に人気の中目黒で繁盛店を目指し、順調な歩みを進めています。なぜ「まこちゃんは」、新橋とまったく客層の異なる中目黒に出店したのでしょうか。そんな名店の取り組みを丁寧な取材を通してレポートするのは、フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さん。千葉さんは今回、早くも月商1,000万円を超えた「まこちゃん ナカメグロ」の「おしゃレトロ」戦略と、新天地でも引き継がれている同社の文化を紹介しています。

プロフィール千葉哲幸ちばてつゆき
フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

新橋だけで5店も展開する、やきとん老舗まこちゃんが「名物秘伝たれ」と「おしゃレトロ」で挑む新しい道

東京・中目黒に昨年11月「まこちゃん ナカメグロ」という居酒屋がオープンした。「まこちゃん」と言えば、サラリーマンの聖地「新橋」にある大繁盛店「やきとん まこちゃん」を連想する人が多いことだろう。

新橋本店の外観。店舗がシンメトリーになっているが、これは繁盛していた創業店が、空いた隣りの物件をつなげたことの名残り

新橋本店の外観。店舗がシンメトリーになっているが、これは繁盛していた創業店が、空いた隣りの物件をつなげたことの名残り

新橋に現状3店舗あるが、どの店も夕方5時を過ぎると満席になり、優に3回転、4回転している。このようにサラリーマンに愛される「まこちゃん」はいかにして中目黒に出店することになったのだろうか。

新橋本店の平日19時の様子。このような繁盛風景で日に3~4回転している

新橋本店の平日19時の様子。このような繁盛風景で日に3~4回転している

創業以来55年間つぎ足しのたれ

「やきとん まこちゃん」を展開するのはマックスフーズジャパン(本社/東京都品川区、代表/西田勇貴)。先代の西田眞氏が1968年に創業した。

同店の一番の魅力は圧倒的なコスパの高さ、「名物秘伝たれ」をうたうやきとんが1本160円(税込、以下同)であること。しかも見た目に大きい。串を持つと重さを感じる。優に50g以上ある。このたれはこの大振りのやきとんにとても良くマッチして強烈に記憶に残る。

実際におしながきに「たれ焼きのおすすめ」とあり、このような文章でお薦めされている。

新橋やきとん まこちゃんのたれは一九六八年の創業以来、毎日丁寧につぎ足し、つぎ足しで造り上げられた「秘伝のたれ」を使用しております。日々、数百本という串が入り、肉の旨みで更に味が深まる「秘伝のたれ」。まずは、この『秘伝のたれ』で当店自慢のやきとんをお召し上がり下さい。

新橋エリアのやきとんは1本160円(税込、以下同)。たれは1968年の創業以来“つぎ足し”でつくり続けている

新橋エリアのやきとんは1本160円(税込、以下同)。たれは1968年の創業以来“つぎ足し”でつくり続けている

お客のほとんどはスーツ姿、男性の先輩に誘われてついてきたという感じのスーツ姿の若い女性が同席しているのを見ると「サラリーマンの仕事帰りって楽しいな」という気分になる。この女性はきっと男性の先輩から「創業以来55年間つぎ足しつぎ足しのたれのやきとんがうまい店があるんだ」と聞かされて来たのだろう。新入女子社員が新橋の居酒屋伝説でサラリーマン社会の奥義に親しむ、といった感じか。

しかしながら、コロナ禍にあって新橋からサラリーマンが消えた。

現在の代表、西田勇貴氏(40)は先代の子息で、2019年に事業継承をして先代が築いた“新橋ドミナント”(*限定エリアの中で集中して店舗展開すること)の路線を継続していくつもりでいたという。

ここで“選択と集中”を決断。店舗は新橋に5店舗あったが、一本通りを隔てた2店舗を閉店して近接する3店舗に集中した。この3店舗でも新橋で5店舗当時の売上と変わらない状態になった。引きついだ事業の中に貿易事業があったが、これからは撤退して飲食業一本で進んでいくことを志した。

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