広島について
いうまでもなく、世界中の人が、広島を知っています。そう、原爆を落とされたからです。岸田さんは広島で、「核兵器のない世界に向けて力強いメッセージを発信したい」そうです、日経4月4日。
<岸田文雄首相は4日、首相官邸で国内外の有識者が核軍縮を議論する「国際賢人会議」の委員らと面会した。5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)では「核兵器のない世界に向けて力強いメッセージを発信したい」と述べた。>
気持ちはわかりますが、これどうでしょうか?
まず、アメリカは、世界で唯一核兵器を使った国です。岸田さんが、「原爆の悲惨さ」を強調しつづければ、バイデンさんは、一人気まずい思いをすることになるでしょう。
さらに、G7の中で、アメリカ、イギリス、フランスが核保有国です。プーチンが、核使用でウクライナと世界を脅している時に、この3国が核兵器を放棄したらどうなるでしょう?プーチンは、報復を恐れることなく、ウクライナに戦術核を使うでしょう。
私たちは、理想の世界を目指していますが、プロセスにおいて現実的でなければいけません。プーチンが「核を使うぞ!」と脅す状況で、「核なき世界」を語るのは、かなり非現実的です。
では、広島の悲劇を、世界平和に用いる方法はないのでしょうか?あります。「ロシアが今、核による恫喝を繰り返していることの非人道性」を強調するのです。
岸田さんは、核保有国アメリカ、イギリス、フランスに、「広島では、プーチンが核の使用に言及していることを厳しく糾弾しよう!」と伝え、安心させるべきです。
というわけで、「岸田さんがG7広島サミットを成功させる方法」について考えてみました。ポイントは、
・G7最大の課題は、「ウクライナ問題」である
・ウクライナ問題と台湾問題はつながっている
・ロシアがウクライナに勝てば、台湾侵攻の可能性が高まる
・ロシアがウクライナに負ければ、台湾侵攻の可能性は減る
・だからG7は一体化してウクライナ支援を継続しなければならない
・「核なき世界」を強調すると、核保有国アメリカ、イギリス、フランスが困る。特に、ロシアが核で脅迫している今、西側が核を放棄することは非現実的
・だから岸田さんは、「核で脅迫しているプーチンの非人道性」を思い切り強調すべき
となります。
その他、いろいろなことが話しあわれるでしょう。しかし、「心を一つにしてウクライナ支援をつづけ、ウクライナを勝たせよう」となれば、成功といえます。
3月、ウクライナを訪問した岸田総理は、「ウクライナの美しい大地に平和が戻るまで、日本はウクライナと共に歩んでいきます」と約束しました。そんな岸田さんのことを、ゼレンスキーは、「国際秩序を強力に守る人」と呼びました。
岸田さんは、今こそウクライナとの約束を果たすべきです。それが、善悪論でも勝敗論でも日本の国益に合致しているのですから。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年5月13日号より一部抜粋)
image by: photowalking/Shutterstock.com
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