歴史を辿れば「若い男に失恋して自殺した女性」だった、レズビアンの名前“誕生秘話”

 

性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとして、近年よく聞くようになった「LGBT」という言葉。これは、女性同性愛者のLesbian(レズビアン)、男性同性愛者のGay(ゲイ)、両性愛者のBisexual(バイセクシュアル)、性自認が出生時の性別とは異なる人を指すTransgender(トランスジェンダー)の頭文字から取られています。今回、この内のL(レズビアン)誕生の歴史を、メルマガ『歴史時代作家 早見俊の無料メルマガ』の著者で時代小説の名手として知られる作家の早見さんが解説。レズビアンの語源は、2600年前のギリシャにまでさかのぼるといいます。

レズビアンの語源

みなさんはレズビアンの語源をご存じでしょうか。語源は遥か2,600年前のギリシャに遡ります。

エーゲ海に浮かぶ、レスボス島生まれの女性というのがレズビアンの意味です。では、レスボス島生まれの女性がどうしてレズビアンの語源となったかというと、レスボス島には乙女たちを愛し、それを美しい詩に描いた一人の女性詩人がいたからです。

その詩人はサッポーという名で知られています。彼女は紀元前612年レスポス島の首都、ミテュレーネで生まれました。父親は貴族で、サッポーには兄と弟が3人いたそうです。

サッポーは成長すると私塾を開きます。結婚前の若い娘たちばかりが塾生で、サッポーは彼女たちに歌と琴を教えました。塾では美と愛の女神アフロディーナが崇拝されました。

サッポーはアフロディーナを賛美する詩を作り、塾生たちにも女性を賛美、同性愛的な傾向の詩を創作させます。塾では乙女たちの情熱的な愛の交歓が行われていたのです。まさしくサッポーの塾は男子禁制の女の園であったのです。

もっとも、同性愛といえど、恋愛であるからには失恋もあります。サッポーは恋愛の素晴しさと共に失恋の苦悩も詩にしています。そんな元祖レズビアンのサッポーでしたが、意外なことに結婚したこともありました。

同姓婚ではなく、男性と結婚し、娘をもうけています。今日から見れば、LGBTのB、すなわちバイセクシュアルであったのかもしれません。夫のことはよくわかっておらず、別れたと思われています。

やはり、女性の方を好んだのかというと夫以外の男性を夢中になって追いかけたことも記録されています。彼女の晩年、55歳の時、20歳そこそこの船乗りに恋をしたのです。

船乗りはサッポーに気はなく、しつこく言い寄られてシチリア島に逃亡してしまいました。サッポーは追いかけ、イオニア海のレウカス島まで来たところで熱が冷めました。35歳も年下の男との恋が成就するはずはないと絶望したのです。

絶望のあまり、サッポーはアポロン神殿のある白い岸壁から海に身を投げ自殺しました。元祖レズビアンは若い男に失恋してこの世を去ったのです。

image by: Martin Corr/Shutterstock.com

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