研究で明らか。禁煙して太っても「病気のリスク」は喫煙者の半分

 

年代別にみると、急激な喫煙率の減少傾向が見られる60歳以上は21.3%ですが、30歳代から50歳代はまだ35%前後を推移しており、一番高い年代は40歳代で35.5%でした。成人男性の喫煙率は、減少し続けていますが、諸外国と比べると、いまだ高い状況にあり、約1400万人が喫煙していると推定されます。

これに対し、成人女性の平均喫煙率は8.7%であり、ピーク時(昭和41年)より漸減しているものの、ほぼ横ばいといった状況です。喫煙率が一番高い年代は40歳代の13.6%、最低は60歳以上の5.4%です。私はタバコは吸わないので、とても良い傾向と思いますが、女性の喫煙率が昭和41年とほとんど横ばいとは意外でした。

しかしながらタバコをやめると体重が増加することが多いです。数あるタバコの害の中で、今回の記事は、JAMAに掲載された『禁煙と心血管イベント』についての研究論文のお話です。

「禁煙により心血管イベント(*)減少効果が得られるのは即理解できるけれど、禁煙後に肥満してしまうことで心血管イベントリスクが増えたら、禁煙の効果は相殺されてしまわないか?」という疑問が生じる読者もおられると思います。

この件に関して、JAMA 2013; 309: 1014-1021 に研究報告が掲載され、それについて[MT Pro 2013年4月4日]に山田悟医師の解説がありましたので、以下一部抜粋してご紹介します。

禁煙したら太っちゃったよ! 先生、俺、大丈夫かな? 禁煙後の体重増加と心血管疾患の関係 [MT Pro 2013年4月4日]

 

この研究は有名なフラミンガム子孫研究のサブ解析がデータベースです。非喫煙者、最近の喫煙、長期の禁煙者、喫煙者の4群に分類して比較検討です。

 

これまで、体重増加は禁煙後の健康問題の1つとされてきました。今回の研究結果から、糖尿病であれ、非糖尿病であれ、たとえ体重増加があっても、禁煙の成功により心血管のリスクが半分程度(0.49)に減ることが分かりました。

 

禁煙成功のメリットは体重増加のデメリットとは比べ物にならず、禁煙に成功したことの意義の方がはるかに大きいと言えます。

論文の結論として

  1. 最近の禁煙者は体重を増加させたが心血管イベントリスクは半分に減少
  2. 糖尿病の人は非糖尿病の人より、心血管イベント発症率が多い
  3. 喫煙者よりも非喫煙者、禁煙者で心血管イベントの発症率は低下

つまり、少々太っても、禁煙のメリットのほうがはるかに大きいということなのですが、「禁煙+糖質制限食」なら、体重増加もないですね。

(*)心血管イベント
通常は心筋梗塞と脳卒中のことを指すのですが、論文により狭心症や心不全の悪化などを含むこともあります。

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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