80歳を過ぎて血圧140/90未満への降圧は「死亡リスク」上昇の意外

Scaled up look on nurse checking arterial pressure
 

高齢患者の降圧目標値は議論中

高血圧有病率は70歳の70~80%に上る。欧州のガイドラインでは、心筋梗塞や脳卒中を予防するための降圧目標値として65歳以上で140/90mmHg以下を推奨。80歳以上にも同じ目標値が適用されるが、個々の患者で併存症などの付加的要素を考慮する必要がある。

高齢高血圧患者の予後を改善する至適降圧目標値については、いまだ結論が出ていない。今回の研究では、降圧療法により地域在住高齢者の血圧を140/90mmHg未満に管理することと全死亡リスク低下との関連を検討した。

対象は、慢性腎臓病対策のための高齢者コホートBerlin Initiative Study(BIS)登録時(2009年11月~11年6月)に70歳以上で降圧薬を服用していた患者1,628例(平均年齢81歳)を対象に、血圧正常化は収縮期血圧(SBP)140mmHg未満および拡張期血圧(DBP)90mmHg未満とし、非正常化はSBP 140mmHg以上またはDBP 90mmHg以上と定義し、2016年12月まで前向きに追跡した。

イベント既往で死亡リスク61%上昇

8,853人・年の追跡期間中に1,628例のうち636例で血圧の正常化が認められ、469例が死亡した。

Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、正常化血圧は非正常化血圧に比べて、性、BMI、喫煙状態、飲酒量、糖尿病、降圧薬数を調整後の全死亡リスク上昇と関連していた。

正常化血圧群は非正常化血圧群に比べて、特に80歳以上では死亡リスクが40%上昇、同様に心血管イベント既往例では、死亡リスクが61%上昇した。一方、70~79歳または心血管イベント非既往例では、この傾向は観察されなかった。

降圧療法で個別調整が必要

以上の結果から、Douros氏らは「80歳以上または心血管イベント既往歴を有する高齢者を降圧療法で140/90mmHg未満に管理することは死亡リスクを高める可能性がある」と結論。

また、これらの患者群の降圧療法について、「個人のニーズに応じて調整する必要性が示された。欧州の高血圧診療ガイドラインを全ての患者に適用する、現行のアプローチを変更するべきである」と付言している。

今回使用されたデータは、同施設のElke Schaffner氏が主導するBISの一部として集積されたもので、2009年以降、2年ごとに問診、血圧・腎機能測定、血液・尿検査が実施された。

同氏は「今回、降圧が6年後の死亡に及ぼす影響とその程度を検討した。次のステップとして、どのような高齢高血圧患者で降圧療法が有益なのか検討したい」と述べている。

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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