北朝鮮と中国の常套手段。恫喝・脅迫はしても絶対に戦争はしないワケ

 

2.中国の軍備は恫喝の道具

1990年代に中国の最高指導者、トウ小平は韜光養晦、「才能を隠して、内に力を蓄える」という方針を打ち出した。当時、中国は89年の天安門事件で孤立しており、爪を隠して国際社会での存在空間を広げつつ、経済力もつける必要に迫られていたからだ。

2011年に中国のGDPは日本を追い抜き、世界第2位になった。その翌年の2012年、習近平は党総書記となった。

2017年に2期目となると、共産原理主義ともいえる思想を隠さなくなった。党規約に「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」(習近平思想)を明記させ、企業には共産党組織を設置した。この段階で改革開放は完全に否定された。

2016年にトランプ大統領が誕生すると、米中貿易摩擦が表面化し、そこに新疆ウイグルの人権弾圧問題が加わった。

更に、中国のゼロコロナ政策により、外資企業の撤退、中国輸出企業の倒産が増えた。

また、中国の不動産バブルが崩壊し、不動産開発企業の淘汰だけでなく、地方政府、金融機関の財政破綻にも波及している。

中国の軍事費は、経済成長と共に増加し、22年の国防予算は1兆4500億元超(約30兆円)で、日本の22年度防衛予算(約5兆4005億円)の5倍以上に達している。来れば経済の衰退に伴い、どのように推移するかは不明だ。

習近平政権は「強軍」実現を目指しており、空母の整備や東・南シナ海での活動を活発化している。そして、習近平政権は、事あるごとに台湾統一を強く主張している。

しかし、中国の行動を見ていると、北朝鮮と同様、恫喝や挑発に終始している。空母も原子力潜水艦も性能が低く、何度もトラブルを起こしている。

更に、習近平政権は完全に軍を掌握しておらず、現在は、軍幹部の粛清の最中である。同時に、習近平自身への暗殺やクーデターの不安も払拭できていない。こんな状況で、軍を派遣することはできないだろう。

習近平政権ができることは恫喝である。日本や台湾への恫喝を繰り返すことにより、中国に対する不安を増殖させることが狙いだ。もちろん、核恫喝も行うだろう。

同時に、政治工作や情報工作により、台湾国内に親中政権を誕生させ、平和的な支配をも目指している。日本に対しても、一方で恫喝を続けながら、一方で中国市場の可能性を訴求するなど、硬軟織りまぜた情報戦略で揺さぶりをかけている。

中国は、今後も日本領海付近で軍艦や海警船による恫喝を続けるだろうし、領空侵犯による恫喝を続けるだろう。中国に駐在している日本人をスパイ容疑で拘留したり、日本企業の資産を凍結するだろう。日本政府は日本企業は、こうした事態への対応について、十分に検討しておく必要がある。

中国は、台湾に対しても恫喝戦略を続けるはずだ。仮に台湾侵攻を実行したとしても、離島の占領等に留まり、その成果を派手に宣伝するだろう。

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