うつ病を発症した人は、睡眠時間に異常を来すことがしばしばあると言われています。5時間以下の短時間睡眠も9時間以上の長時間睡眠もうつ病の症状の一つと考えられていますが、うつが先か、睡眠障害が先かはわかっていないようです。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、8年にわたって調査したイギリスの研究を紹介。睡眠時間の遺伝的傾向とうつ病の関係について、ある可能性を指摘しています。
睡眠時間の遺伝的傾向とうつ病
うつ病を発症すると睡眠時間が(短い方向にも、長い方向にも)変動することが知られています。今回は、睡眠時間の遺伝的傾向とうつ病発症との関連を調べた研究をご紹介します。
多遺伝子が関連する素因、短時間睡眠、うつ病
● Polygenic predisposition, sleep duration, and depression: evidence from a prospective population-based cohort
イギリスの加齢による影響を調査した研究the English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)の参加者7,146人(平均65歳)を当初のサンプルとしています。参加者の遺伝子に関するデータを入手し、睡眠の傾向とうつ病との関連を調べています。
結果として、以下の内容が示されました。
- 5時間以下の睡眠となる遺伝的傾向があると、うつ病の発症が多くなっていました(オッズ比:1.14倍)。
- 睡眠の傾向を示す遺伝的スコアと長時間睡眠の傾向とうつ病とは明らかな関連を示していませんでした。
要約:『短時間睡眠の遺伝的傾向があると、うつ病の発症が多くなるかもしれない』
睡眠の傾向全体と一貫した関連ではありませんでしたが、短時間睡眠となる遺伝的傾向は、うつ病発症の素地となる可能性が示されていました。
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