水のように柔軟。サントリーの社会サービスの底辺にある対応力

Tokyo,Japan,-,May,9,,2015:,Suntory,Museum,Of,Art.
 

サントリーホールディングスの完全子会社で、全国で公共施設を指定管理するサントリーパブリシティサービス株式会社(SPS)。その業務範囲には、「どんな方にとっても利用しやすい公共施設の運営」も含まれると言います。そんなSPSから講師を招き開催したシンポジウムで多くの知見を得たというのは、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長の引地達也さん。引地さんはメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で今回、SPSの「水と生きる」というサントリーの企業理念に紐づく、優れた福祉対応の数々を紹介しています。

サントリーの「福祉」は創業者・鳥井信治郎が大阪あいりん地区での無料診療所開設から始まった

共生社会の実現に向けて社会教育を目的とした公共施設を誰もが不自由なく使える場所にする取り組みはまだまだ不十分なのが現状だ。

その不十分さを認識し、具体的な行動を促進するのを目的に先日、「インクルーシブ&ダイバーシティな場づくりを考える 民間指定管理者による公共文化施設のサービスからの学び」とのシンポジウムを開催した。

みんなの大学校と共同研究するサントリーパブリシティサービス株式会社(以下SPS)の青木正樹さんを講師に、全国で公共施設を指定管理するSPSの蓄積された知見から学ぼうとの趣旨。

特に民間企業では来年度から合理的配慮が義務化されることで、具体的な対応が求められているのも開催の背景にある。

SPSからの話が、飲料メーカーのサントリーの企業理念と紐づけられ、キャッチフレーズである「水ととも生きる」に込められた思いが、インクルーシブな社会づくりにつながることも示された。

やはり動きには思索の深い哲学が必要である。

登壇した青木さんは現在、全国の8か所で指定管理文化施設の事業企画統括として年間約350公演の企画制作に携わる。

企画内容のみならず、どんな方にとっても利用しやすい公共施設の運営も業務範囲である。

冒頭で強調したのはサントリーの企業理念である「人と自然と響きあう」であり、そのメッセージとして示されている「水と生きる」だった。

この「水と生きる」のは3つのパートで構成され、それは「水とともに生きる─自然との共生」「社会にとっての水となる─社会との共生」「水のように自在に力強く─社員とともに」という。

環境によって形状を変化させる水のように、柔軟に対応するのもサントリーのサービスの底辺にあるとのこと。

さらに福祉とのつながりでは、創業者の鳥井信治郎が大正時代に大阪の愛隣地区で生活困窮者向け無料診療所「今宮診療院」を開設したところから始まるとの話を紹介した。

青木さんによると、文化ホールや美術館等、障がいのある人が訪れる際、最近になっての大きな変化は、障がいのある人に「何かをする」のではなく、「してほしいことをする」ようになったという。

これまでは否応なしに介助するものだと思っていたが、現在はまず「何をしてほしいですか」とのお声かけから始まるとのこと。

聴覚障がい者でも視覚障がい者でもひとりでその場を感じ、楽しみたい人もいる。

だから、SPSではいつでも対応できるように「看守り」という表現を使い、その方を優しく見ることに徹するのだという。

例えば日本で当時のまま残る最古の美術館である、京都市京セラ美術館では、完全なバリアブルな施設でいたるところに段差があり、急で厳かな階段が障がい当事者の前に立ちはだかる。

そのため、「ハードの障壁はソフトで補うため」もあり、車椅子ユーザーが入場した際にはスタッフ全員に車椅子ユーザーの入場がインカムで伝えられ、行く先々で対応できるよう準備するための情報共有するのだという。

活発な動きと看守る姿勢のバランスは今後、この行動を継続することで確実な知見となっていくだろう。

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