岸田首相「独り勝ち」の後に残る懸念
だが、皮肉なことにその茂木派から、昨年6月に亡くなった“参院のドン”青木幹雄氏が総理にしたいと願った小渕優子選対委員長と、青木氏の長男、青木一彦参院議員が離脱した。
そのほか、青木氏の息のかかった参院自民の幹部3人と衆院議員2人が同派を退会する予定で、茂木派分裂の様相を呈してきた。
麻生派からも、岩屋毅元防衛大臣が離脱を表明しており、麻生副総裁の権力基盤は大きく揺らいでいる。
まさに、派閥という泥船からいっせいに議員たちが逃げ出しているような状況だ。党内は混沌とし、これまでの勢力図は消滅しつつある。
はっきり見えているのは、派閥の実力者たちが力を失った一方で、党と政府のトップである岸田首相だけが依然として権力を握り続けているということだ。
この政治状況を、岸田首相が深慮遠謀で生み出したとは思えない。おそらく、追い詰められたあげく、最後の一手として打った「派閥解消」策が図に当たったということなのだろう。
ひとまず麻生氏を封じたことにより、当面の危機は乗り切れたといっていいのかもしれない。
しかし、政治資金の透明化を断固としてやり遂げようという気迫は、岸田首相から微塵も感じられない。
「派閥解消」が焦点ずらしだと国民に見透かされているためか、内閣支持率も岸田首相が目論んだほどには好転していない。
今後、解散・総選挙を打つことができなければ、9月の党総裁選が近づくとともに、政策集団という名の派閥が次々と誕生するだろう。
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