高校サッカーの名将として知られている小嶺忠敏氏の人生の支え、それは母親から聞いた「いくつかの言葉」でした。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、「無理だ」と言われたことを実現する力をどこから出すのかについて語った小嶺さんのインタビューを紹介しています。
高校サッカーの名将を支えた母の言葉
長崎県の国見高校や、長崎総合科学大学附属高校の監督を務め、サッカー界の名将として知られた小嶺忠敏氏。
その小嶺氏が人生の支えとなったというお母様の言葉を、『致知』の取材で紹介してくださったことがあります。
『致知』2006年11月号より、記事の一部をお届けします。
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麦は踏まれて強くなる
小嶺忠敏/長崎県立国見高等学校サッカー部総監督
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私の場合は、母に育てられましたから、母の教えが人生の支えとなっています。
うちの地方では麦踏みというのがあるんですよ。麦は少し背丈が伸びたら踏み倒す。
一週間くらいたって、また伸びてきたら、また踏み倒す。それを三回くらい繰り返すんですよ。小さい頃、私はそれが不思議でならなかった。
ある日、母に
「どうして何度も麦を踏み倒すの」
と聞いたら、
「踏まれた麦は上を向いてスクスク育っていくが、踏まれていない麦は冬に霜や雨が降るとしおれてしまって、作物にならない」
と。続けて
「人間も同じだよ。小さい頃や若い頃に苦労して、踏まれて踏まれて大きくなった人間が将来大物になるんだぞ」
と教えられました。
もう一つ心に残っている教えがあります。
九州は昔から台風が多いのですが、台風が去った後、母が「あれを見てごらん」と指した方向に、大木が何本も折れて倒れていたのです。
一方で、大木の横にある竹やぶの竹は一本も折れていない。
母は
「竹にはところどころに節がある。だから強いんだ。人間も遊ぶ時は遊んでもいいが、きちっとけじめをつけて、締めるところは締めないといけない」
と教えてくれました。
「節ありて竹強し」なんですね。
これらの教えが辛い時、私の支えでした。
実際、長崎の島原にいながら県立高校で日本一を目指すことは、当時の常識で考えれば不可能に近いことで、高校の同級生たちからは
「バカか、おまえは。こげんとこで日本一になれるものか。もしおまえが日本一になったら、俺らは島原中を逆立ちをして歩くたい」
と言われましたよ。
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