【大炎上】鳩山クリミア訪問に同行したジャーナリストが明かす、現地の実情

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クリミア現地に行って真っ先に体感するのは、ロシアによる実効支配はすでにあまねく行き渡っていて、1年前の住民投票が合法であるか否かについてウクライナ・米欧とクリミア・ロシアとの間に論争は残るけれども、現実にクリミアが再びウクライナの下に戻る可能性は絶無だということである。

池上彰は週刊文春の連載コラムの3月5日、12日両号で「クリミア半島はいま」を書いていて(最近行ったような書き方をしているが、ロシア側に確かめると行ったのは昨年夏頃のようで、その時は外務省はどう対応したのだろうか?そして、今になってこのコラムを書いて彼はどうしてスキャンダルの血祭りにあげられないのだろうか?答えは簡単で、彼は「鳩山」でないからだ!)、その中で、

▼クリミア半島はいまはロシアが実効支配していて、平穏である。

▼公共事業が増えて失業率が低下した。給料も平均で3倍になり、インフレはあるが、生活は前より楽になった。

▼一番変わったのは医療保険で、ウクライナ時代は治療費がほぼ全額自己負担だったのに対して、現在はすべて無料になった。高度な医療が必要な重病患者が出た際には、モスクワの医療機関に運んで治療が受けられるようになった。

▼小学校5年生のクラスで「ロシアになって良かったと思う人」と問うと、1人を除いて30人が挙手した。

──などの事実を伝えていて、その通りだろう。因みに、給料だけでなく年金もロシアの制度に組み替えられて、支給金がウクライナ時代の少なくとも2倍になった。

この「平穏」ということには特別の意味があって、私が接した何人かの人たちがそれを強調した。1年前のキエフの政権崩壊後、ウクライナ東部が血みどろの内戦に突入して行く中で、クリミアにも親米欧派の武装勢力が侵入してクリミア駐在のウクライナ軍部隊や反ロシア派のタタール人指導者たちと連携して反露争乱を引き起こそうとしたが、プーチンの素早い決断で自警団(及びロシアの覆面部隊)による予防措置が徹底され、その下で住民投票実施によるロシア編入が決行された。それを、「ロシア軍の軍事侵攻による力をもってしての領土変更」と見るか、「住民の自発的意思による独立、そしてロシア編入の選択」と見るかは、それこそ見方が分かれるところではあるけれども、少なくともクリミアの圧倒的多数の人びとが「クリミアが血みどろの内戦に転がり込まなかったのはプーチンのお陰」と心底思っているのは事実である。

実際に首都シンフェローポリでもヤルタやセヴァストーポリでも、治安は東京並みに行き届いていて、街中や街道筋はおろか政府関係の建物でも銃を持った警備兵など一人もおらず、警察官の姿さえほとんど見かけない。何よりも人びとの表情が平安で、武力による威圧の下で一方的にロシアに編入されたというキエフや米欧の捉え方には何の根拠もないことが分かる。

この状況で米欧や日本が「クリミアはロシアに武力制圧された」というキエフ政府の虚構にいつまでもしがみついていると、永遠に制裁解除は出来ないことになり、それはロシアのみならず西側の利益にもならない。多くの人がクリミアにも、また内戦が収まるに連れてキエフやウクライナ東部にも入って実情を我が目で確かめ、現実に即した解決策を大いに議論すべき時である。

 

『高野孟のTHE JOURNAL』Vol.177より一部抜粋

【Vol.177の目次】
1.《INSIDER No.776》
一体何なのか、鳩山クリミア訪問を巡る狂騒
──異論を許さない嫌~な国柄へ

2.《FLASH No.090》
「農協潰し」は安倍政権の政治的怨念

3.《CONFAB No.175》
閑中忙話(2015年03月08日~14日)

4.《SHASIN No.153》付属写真館

『高野孟のTHE JOURNAL』

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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