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止まらぬ韓国ウォン安「通貨危機」3度目なるか?過去2回と酷似する4つの兆候。日本は高みの見物=勝又壽良

通貨危機の共通項は4点

韓国に、3回目の通貨危機(ウォン暴落)が来るのか、過去2回の共通点が現在、あるのかどうかを検討したい。まず、過去2回の共通点を挙げたい。

1)米国の利上げにより、韓国と逆転現象が起こったか
2)貿易赤字と半導体市況の下落が、重なっているか
3)民間部門は、過剰債務を抱えていないか
4)政権は、経済危機時に迅速に対応できるか

以上の4点は、韓国が通貨危機の嵐を切り抜けられるか、どうかのポイントを握っている。私のコメントを付したい。

(1)米韓の間で、過去に金利の逆転(韓国よりも米国が高い)は次のように起こっている。
1999年6月~2001年2月
2005年8月~2007年8月
2018年3月~2020年2月

前記の3回は、韓国経済に打撃を与えなかった。当時は、いずれも物価が安定している状況下という点で、現在とは全く異なるのだ。米韓の金利を比較しても無意味である。ただ、現在のように世界的な物価動乱によって、金利が引き上げられている状況では、結論が全く違ってくる。つまり、米国が短期間に金利を引き上げ、3%を超えた時はウォンが確実に売られているのだ。

9月21日のFRBの利上げが、23日のウォン売り一色を招いた。さらに、24日のウォン相場が、「棒下げ」状態へ追込まれたのはこれを反映している。冒頭で指摘したように、昨年11月以降の米国投資銀行は、世界中の投資見直しに入っている。韓国から資金を引き揚げて、米国で運用するほうがはるかに有利な局面になっているのだ。

(2)貿易赤字と半導体市況の下落が、重なっているかが重要である。韓国は、輸出依存度(対GDP比)が31.69%(2020年)、貿易依存度(同)は58.35%(2020年)と高い国だ。これは、韓国が輸出で高成長してきた結果である。現在のGDP規模が、世界10位にあるのは、狭隘な国内市場を輸出でカバーしてきた結果である。つまり、韓国が現在のGDPを維持するうえで輸出が不可欠であることを物語っている。

韓国輸出のなかで占める半導体比率、約20%にも達している。韓国は、この半導体市況次第で、輸出動向が大きく変動するという宿命を負っている。半導体輸出増加率は、今年3月(37.9%)をピークにして、7月は25カ月ぶり最低値の(2.1%)に落ちこんだ。8月は7.8%減である。半導体在庫は増え続け、市況は急落している。

半導体市況は、前2回の通貨危機時も落ちこんで、輸出は低迷した。今回と状況はまったく似通っていることに注意すべきである。半導体メーカーは、過去3年もの間、「半導体飢餓」状況が続いて、大型設備投資に踏み切っている。これら投資が今後は順次、生産能力化する。供給が増えているが、需要は頭打ちになっている。パソコンやスマホの需要一巡が大きく響いているのだ。

増え続ける民間債務残高

(3)民間部門は、過剰債務を抱えていないか。韓国社会は、もともと「借金忌避」という感覚が極めて低い。「借り得」といった感覚すらあるのだ。その点で、日本社会とは真逆である。ただ、韓国政府が、国民に借金せざるを得ない状況をつくり出した側面も大きい。

文政権による無理な最低賃金引き上げが、韓国の雇用構造を破壊したことによって、貧困生活へ追込まれたからだ。OECD「2022年韓国経済報告書」によると、次のように指摘している。

A)最低賃金の急激な引き上げが、若者雇用の90%を担う中小企業の経営状況を悪化させた。
B)最低賃金は、2017年から2019年まで約30%増加した。このように急激な引き上げは、中小企業の雇用を削減した。

要するに上記の点で、韓国の民間部門である中小企業とその被雇用者にしわ寄せが行ったとしている。これらが、同時に民間部門債務を急増させた背景にある点を見落としてはなるまい。

こうして民間部門の過剰債務が、米国の金利引き上げに伴う韓国の「フォロ-利上げ」によって、大きな痛手を受ける。今年6月末基準で1,869兆ウォン(約190兆円)まで増えた家計債務は、政策金利が0.5ポイント上がるたびに、年間の利子負担が約6兆6,000億ウォン(約6800億円)ずつ増えるという。

韓国の金利が、米国並の4.4%(年末)まで引き上げられれば、後1.9ポイントもの引き上げだ。ざっと、2兆7,000億円もの負担増だ。大混乱となろう。

Next: 尹政権はウォン暴落を回避できるか?政権交代期に起こる危機

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