(3)の強力なパートナーシップは、日本の歴代興行収入(入場料収入)ランキングに現れています。
出典:興行通信社
日本の歴代興行収入トップ10のうち、実に6つが東宝が配給した映画なのです。
ここで、映画における制作・配給・上映の違いを認識すべきでしょう。
千と千尋の神隠しを制作したのはスタジオジブリです。このような制作会社は映画を企画し、資金を調達し、キャストやスタッフを集め、撮影から編集に至るまでの全プロセスを管理することを指します。
そして出来上がった映画を配給するのは東宝などの配給会社の役割です。配給とは製作された映画を劇場や他のメディアプラットフォームに提供し、公開する全プロセスを担当します。配給会社は映画をマーケティングし、公開スケジュールを決定し、映画館との交渉を行い、映画を宣伝して視聴者に届ける役割を果たします。
そして配給会社が、イオンシネマなど映画館に対して映画の上映権を提供し、我々が足を運び映画が上映されるわけです。
つまりジブリや「鬼滅の刃」を制作しているソニー系列のアニプレックスとの協力関係があることは、競合他社よりも「ヒット作の仕事がもらえる」という点で優位性があるのです。
出典:各社ホームページより作成
こういった、今後もヒット作を生み出すと期待されるスタジオジブリのような制作スタジオとの、深いパートナーシップが大きな強みとなっているのです。
しかし、気になる点もあります。それは動画配信サービスの普及です。
動画配信サービスは敵なのか?
私は映画館で見る映画は高級品だと思っています。
1本2,000円近い映画チケットにポップコーンやドリンクをつければ、3,000円は簡単に超えるでしょう。
一方で、AmazonプライムやNetflixであれば、月1,000円でいくらでも映画が見れます。
東宝はコロナ禍で大きく業績を落としました。
その間に動画配信サービスの利用は拡大しています。
出典:日経XTECH
ではこういった動画サービスの影響で、従来の映画ビジネスは縮小してしまうのでしょうか?
実はそうとも言い切れません。
東宝は2021年にNetflixと提携し、Netflix向けのオリジナルコンテンツ制作に向けて東宝スタジオ関連のスタジオを貸し出すことを発表するなど、映画事業者と動画配信サービスが協力する傾向が見られます。
また、東宝はアニメ制作の機能を有しているため、こういった配信サービスからの営業収入(売上)も増加しています。
出典:決算説明資料より作成
社長の松岡氏は、東洋経済のインタビューの中で
「配信サービスと映画は対立の構造ではない。作品をたくさん買ってくれるビジネスパートナーでもあり、宣伝の機会として活用することもできる。対立するのは配信会社のオリジナル作品が、映画館で上映されず配信だけになる場合に限られる。」
と述べています。
つまり「Amazonプライム独占配信作品などを、映画館で上映できないことは機会損失が生まれる」と考えることができるかもしれません。
まとめると、映画事業者と動画配信サービスはお互い協力し合いながら作品を制作・配信していると言えるでしょう。
次は東宝に対する中長期的な期待を解説します。