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ユナイテッド、社会課題解決と事業性の両立目指す企業への「善進投資」拡大 教育事業はベストコを中心に拡大

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2025年11月29日にログミーFinance主催で行われた、第119回 個人投資家向けIRセミナーの第5部・ユナイテッド株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

パーパス

山下優司氏(以下、山下):ユナイテッド株式会社取締役兼執行役員の山下です。休日の貴重な時間にご視聴いただき、ありがとうございます。当社のことを少しでもご理解いただける時間にしたいと思います。

まずはコーポレート・サマリです。当社の経営における最上位概念のパーパスは、「意志の力を最大化し、社会の善進を加速する。」です。このパーパスには、当社の事業を通じて、意志ある個人や意志ある事業の力を最大化し、社会をより善い方向に進めたいという思いが込められています。

会社沿革

山下:当社の沿革です。いくつかの上場会社を合併して設立されており、やや複雑な経緯があります。そこで、スライドの図を用いて簡単にご説明します。

現在のユナイテッド株式会社の母体となっているのは、スライドの一番上にオレンジで囲ってある、ネットエイジという会社です。2000年に東証マザーズに上場し、インキュベーション事業を展開していました。こちらの会社と、名証セントレックスに上場していた株式会社フラクタリストが合併しています。

一方、メールマーケティングを行っていた会社で、2002年にナスダック・ジャパンに上場していた株式会社エルゴ・ブレインズと、株式会社インタースパイアが合併しました。こちらの会社が、2012年にさらに合併し、ユナイテッドとしてスタートしています。

増井麻里子氏(以下、増井):質問を挟みながら進めたいと思います。1998年に設立とのことですが、創業のきっかけを教えていただけますか? 

山下:1998年当時、日本ではインターネットバブルが訪れる前夜のタイミングで、現在行っているスタートアップ向けの投資事業のような取り組みを開始しました。

日本国内で多くのベンチャーやスタートアップが生まれてくる状況の中、その支援を始めたのが最初です。当時は「bitter(渋い)」と「valley(谷)」を掛け合わせて「ビットバレー」と呼ばれていましたが、渋谷にある会社で、さまざまなスタートアップを支援していました。

増井:投資事業からスタートされたということですか? 

山下:おっしゃるとおりです。

会社概要/経営陣

山下:会社概要です。1998年に設立され、会社としては長く経営を続けています。後ほど詳しくご説明しますが、4つの事業セグメントがあり、複数の事業ポートフォリオを持っています。

経営陣は、私以外に取締役が3名います。共同代表制を敷いており、早川と金子が共同代表として運営しています。

具体的には、早川、金子、樋口が投資事業・アドテク・コンテンツ事業、教育事業、人材マッチング事業をそれぞれ管掌しており、私は経営管理を管掌しています。

事業セグメントおよび構成事業

山下:事業セグメントは4つあります。そのうち3つを当社では成長のコア事業と定義しています。

まず、投資事業は当社のバランスシートを活用し、スタートアップへの投資およびハンズオン支援を行っています。その他の事業は、各グループ会社が運営しています。

教育事業については、IT研修や開発を通じた企業のデジタル化支援を行う株式会社ブリューアス、そして、小学生から高校生向けの個別指導塾を運営する株式会社ベストコで構成しています。

人材マッチング事業は、成長企業に対する転職・副業・フリーランス人材のマッチングおよび採用支援を提供するユナイテッド・リクルートメント株式会社と、株式会社リベイスの2社が担っています。

アドテク・コンテンツ事業については、広告プロダクト、Webメディア・Webアプリ開発事業の中でしっかりと利益を創出し、当社の収益に貢献しています。現在3社が、それぞれスタンドアローンで事業を展開しています。

業績推移(2013年3月期〜2026年3月期)

山下:ユナイテッドとなってからの、2013年3月期以降の業績推移です。2013年3月期から2018年3月期まで、一定の成長を続けてきました。

2019年3月期にはスタートアップへの投資を行い、株式会社メルカリが上場を行うタイミングで当社が保有していた株式を売却しました。その結果、一時的に売上高と営業利益が増加しました。その後、売上高は約120億円から130億円、営業利益は50億円から65億円弱で推移してきました。

進行期である当期については、投資事業での株式売却が見込めないため、営業損失を一時的に計上するかたちになっています。詳細は後ほどご説明します。

増井:「投資事業で大型の有価証券売却を見込めないことを主要因として」とありますが、売却が見込めないことは、どのくらい前からわかるのでしょうか? 

山下:ケースバイケースです。当社は3月決算の会社ですので、現在、来年度の計画を議論し始めている段階ですが、この時期になると翌年度の見通しはある程度見えてきます。

増井:このような大型の有価証券売却が見込めない年は、今後も発生する可能性があるのでしょうか? 

山下:可能性としてはあると思います。ただし、大型の売却が難しい年でも、中型の売却が複数あるケースもありますので、まったく何も見込めない年は今期ぐらいだと思っています。

増井:今期が谷になったということでしょうか?

山下:おっしゃるとおりです。

ユナイテッドグループ全体 事業戦略

山下:当社の事業戦略について、スライドの図に沿ってご説明します。まずは現在の取り組みです。

祖業として利益を大きく創出していた投資事業に加えて、ユナイテッドとなってから10年以上続けてきたアドテク・コンテンツ事業が収益を生み出しています。

これら2つの事業で得られた利益を、教育事業や人材マッチング事業といった、現在コア事業として成長させようとしている分野に投資し、競争力を高めていこうと考えています。

最終的には、教育事業・人材マッチング事業・投資事業という3つのコア事業がそれぞれ同程度以上の規模となり、有機的に連鎖させることで、ユナイテッド独自の強みを生み出していきたいと考えています。

増井:事業それぞれをスタンドアローンで運営しているというお話がありましたが、全体を俯瞰して見るような組織体制となっているのでしょうか?

山下:基本的には、先ほどお話しした経営陣4人がそれぞれ持ち回りで担当しています。

その中で、ユナイテッド全体のポートフォリオにおいて期待される成長が実現しているか、そして最終的にシナジーが創出されるようになっているかを、この経営陣4人でディスカッションしながら進めています。

財務状況、および中期的に目指す収益構造

山下:先ほどお話ししたとおり、当期は一時的に営業損失が発生しました。しかし、財務基盤は非常に安定しており、財務健全性も高い数値を維持しています。そのため、この程度の営業損失であれば、投資余力はしっかりと残っています。

その中で、どのような収益構造を目指しているかについてです。投資事業には、一定のボラティリティがあります。このボラティリティを抑えられるよう努めていきたいと思っています。

したがって、毎期一定以上の利益を継続して計上できるようになることを目指しています。変動が大きくなる可能性もありますが、できる限りその波をなくしたいと考えています。

成長させようとしている3つのコア事業が、成長して利益を乗せてくることで、当社の利益が牽引されます。その上で、アドテク・コンテンツなどの安定して利益が出ている事業がプラスされる構造を目指し、現在取り組んでいます。

株式情報

山下:株式情報についてですが、過去に二度、大きく上昇した局面がありました。

1度目はリリースしたアプリが、米国のトップランキングにおいて2位、3位になることがあり、話題になりました。日によっては時価総額が2,000億円を超えるタイミングもありました。

その後、投資先である株式会社メルカリの上場がありました。その際には時価総額が1,000億円近くにまで達しました。それ以降は現在の水準に近いところで推移しています。

我々は、現状の株価水準が良いとは思っていません。上がったタイミングで購入した投資家の方もいらっしゃることから、なんとかして、より高い水準に戻していきたいと考えています。

現在の株式の状況について、スライドの右側にあるように、高い時価総額に戻せるような数字は出せていません。配当利回りや総合利回りをご覧のとおり、まだ実績を出せていないと認識しています。そのため、できる限り株主還元を強化しています。

2026年3月期 上期(累計)連結業績ハイライト

山下:上期の業績および業績予想についてご説明します。売上高は100億円で、営業利益以下は営業損失が発生する見込みです。現状、上期終了時点の実績は、スライドに記載のとおりです。

基本的には尻上がりの計画となっているため、売上高以下が50パーセントを少し上回ったり、下回ったりしていますが、全体としては計画どおりに進捗しています。事業の進捗には濃淡がありますが、連結全体では順調です。

具体的な数字については、後ほどご説明します。

投資事業 売上高・営業利益(2026年3月期上期時点)

山下:4つの事業について、それぞれご説明します。まずは投資事業です。昨年度は大型の有価証券を売却したことにより、売上高・営業利益ともに30億円台となりました。

今期は計画上で何も見込んでいなかったため、前年同期比では大幅なマイナスとなっています。一方、業績予想の比較では、計画外で株式を売却するなど、計画に対して大きく進捗している状況です。

投資事業 ユナイテッドの投資事業

山下:当社のスタートアップへの投資事業が、他のベンチャーキャピタルと何が異なるのかについて、ご説明します。

一般的に、スタートアップへの投資主体は、「VC」と呼ばれる会社です。ベンチャーキャピタル(VC)は、投資家から資金を集め、その資金をスタートアップに投資して運用する会社です。そのため、投資家に対してリターンを返さなければならない仕組みになっています。

集めた資金には制約があり、その資金をどの企業にどれだけ投資するかも完全に自由ではありません。「集めた資金を何年間でリターンとして返す必要がある」といった制約もあります。

当社の場合は、すべて自己資金から投資を行っていますので、制約が一切ありません。例えば、成長に時間がかかる事業領域にも投資が可能であることが、一般的なベンチャーキャピタルと当社の大きな違いです。

投資事業 事業戦略

山下:投資事業として何を進めようとしているかについて、ご説明します。ユナイテッド独自の投資事業の取り組みとして、善進投資があります。

我々には、20年以上の間スタートアップ・ベンチャーへの投資の中で培ったソーシング力や目利き力があります。また、投資事業も手掛ける事業会社ですので、その経験を活かし、スタートアップを支援する力を用いて、善進投資をさらに拡大させていきたいと考えています。

これにより、ユナイテッドの投資事業の独自性がより強まるのではないかと思います。

増井:投資事業についてお聞きします。投資先を選ぶ際のリストアップの方法やアプローチの手法について、教えてください。

山下:幸いなことに、インバウンドで当社に問い合わせをいただくことが多くなっています。

また、ユナイテッドの経営陣や、投資事業を担うキャピタリストのネットワークを通じて紹介いただく案件も多くあります。おおよそは、その2つの経路から選別を行っています。

増井:御社がリサーチを行わなくても、次々と案件が集まってくるのでしょうか?

山下:実態としては、そのようになっています。ただし、キャピタリストを数名配置していますので、独自に調査して情報を得た案件で、「ここに投資すべきなのではないか」といったところには、個別でアプローチしています。

投資事業 善進投資/テック投資 とは

増井:善進投資には、どのような意味があるのでしょうか? 

山下:「善進」は、当社のパーパスに基づく言葉であり、パーパスの概念を投資事業で表現したものです。

一般的なベンチャーキャピタルとの違いとして、当社はイグジットまで時間がかかる事業に対し、自己資金で投資を行っています。そのため、投資が可能かも踏まえて、社会課題の解決と事業性の両立を目指すスタートアップへの投資を行っていこうと考えています。

例えば、ディープテックのような非常にアカデミックな領域ではなく、解決すべき大きな社会課題を明確に意識しつつ、その中で確実にビジネスとして採算が取れるものを見定めています。そして、そのようなスタートアップにリード投資家として大きく資金を投じることを目指しているのが、善進投資の特徴です。

増井:このような社会課題に取り組む企業の場合、収益性を高めたり、軌道に乗せたりするまでに時間がかかることもあるかと思います。長期の場合、どのくらいの期間まで許容されているのでしょうか? 

山下:明確な期間は定義していません。一般的なベンチャーキャピタルは、投資家から資金を集めて投資を開始し、契約期間は10年程度となっていますが、当社はそのような縛りがないという考え方です。

当然ながら、10年以内に成果を出せたほうがいいですし、早ければ早いほどいいと考えています。ただし、制限を理由に、10年以上かかりそうだから投資をしないということはありません。

増井:選択肢が広がるということですね。

山下:おっしゃるとおりです。「善進投資」と「テック投資」についてご説明すると、善進投資において、現在注力している領域として、「カーボンニュートラルの実現等いくつかのテーマ設定」をしています。

リード投資として実行している案件や、実行中あるいは今後検討中の投資先については、一般的なベンチャーキャピタルが競合に入ることが少なく、我々独自の取り組みとして進めていけると考えています。

増井:企業価値を算定する際には、どのような手法を用いているのでしょうか? 例えば、EBITDAマルチプルなどでしょうか? 

山下:EBITDAマルチプルやDCFも活用します。一般的な手法はすべて用いた上で、それぞれの視点から検討します。

また、投資先から提示された事業計画に、我々独自のストレスをかけたシナリオを用いるなど、複数の手法を組み合わせて判断しています。

増井:ストリクトなシナリオも作られるということですか? 

山下:投資先にもよりますが、例えば、まったく見えていない新規事業は見込まないかたち等です。

投資採算性の評価は、非常にテクニカルかつシビアに行っています。加えて、取り組んでいる社会課題に対する情熱も評価しています。

増井:定量評価と定性評価の両方をしっかりとされているかたちですね。

山下:そのとおりです。一方、テック投資は、一般的なベンチャーキャピタルと投資先が重なる部分があり、同じような投資先の選定手法を用いています。我々としては、一般的にも、これまでの実績的にも、大きなイグジットを達成しています。

株式会社メルカリを筆頭に、昨年はdely(デリー)株式会社(現在のクラシル株式会社)、その前はエキサイト株式会社といった企業があり、年に1つから2つのイグジットが出るイメージで進めています。

投資事業 善進投資事例

山下:善進投資の事例として、株式会社NEWGREEN(ニューグリーン)という会社に投資しています。この会社は、農業従事者の高齢化や人手不足、そして環境問題などに取り組むアグリ(農業)系のスタートアップです。

山形県に拠点を置き、ローカルから取り組みを進めています。具体的には、水田の自動抑草ロボット「アイガモロボ」の開発や、ドイツに本社を置くBASFの日本法人、BASFジャパンと提携し、水を使わない米栽培のライセンスを日本の農家に導入するなどしています。

我々の事業とは距離がありますが、事業内容や取り組みを見ていくと、非常に有効であるため、大きな投資を行いました。今後、ともに成長を目指していく考えです。

投資事業 投資実績

山下:これまでの投資実績について、ご説明します。我々は、投資のリターンが顕在化するまでに、実績ベースで6年から7年かかるとイメージしています。

2013年3月期から2020年3月期の7年間にわたる投資実績は、スライド左側に記載のとおりです。投資を行い、実際に得たリターンが示されています。未実現益を含めると22倍で、非常に大きなリターンを得ています。

スライドの右側は、新規投資件数および金額の推移です。2020年3月期から投資実行数が拡大しています。今後は、スライド左側の実績を超えるリターンを目指し、投資を増やしていく方針です。

今期、全社として営業損失が出ている状況は、2020年3月期、2021年3月期において、投資件数が非常に少なかったことが要因と考えています。

その結果として、イグジットの谷が訪れていると認識しています。来期以降は、しっかりとイグジットを進めていきたいと思います。

投資事業 保有状況

現在の株式保有状況です。上期終了時点で、138社のスタートアップの未上場株式を保有しており、未実現益を含めた時価評価額は78億円となっています。

スライド右側は、バランスシート上に計上している上場株式、未上場株式です。また、我々は48本のベンチャーキャピタルにもLP出資をしていますので、その数と金額が記載されています。

投資事業 2026年3月期進捗

山下:投資件数と投資金額についてです。基本的には、前期から約1年間で30社・15億円の計画で投資事業を進めています。

昨年は45社に投資を行い、計画を大きく上回る結果となりましたが、基本的には30社・15億円の計画に対して順調に進捗しています。

教育事業 構成企業・提供サービス

山下:教育事業です。投資事業以外は複数のグループ会社で構成されています。その中で、我々が特にご説明すべきだと考えている部分について、お話しします。

教育事業は、小学生から高校生向けの個別指導塾を運営している株式会社ベストコと、企業のデジタル化を支援する株式会社ブリューアスがありますが、株式会社ベストコを中心にご説明します。

教育事業 売上高・営業利益(2026年3月期上期時点)

山下:教育事業の上期時点での業績についてです。昨年末から、株式会社ベストコの連結を開始しています。前年上期時点ではベストコの業績が含まれていなかったため、売上高は前年同期比で大きく成長しました。

営業利益は赤字となっていますが、前年同期比で営業損失はわずかに縮小しています。

業績予想比較では、株式会社ベストコの進捗は良好ですが、株式会社ブリューアスの業績は、計画からやや乖離しています。教育事業全体としてオントラックな状況ではあるものの、通期で業績予想を達成するべく、引き続き取り組んでいます。

教育事業(株)ベストコ概要

山下:株式会社ベストコは、2024年12月より連結を開始しました。現在は東北エリアを中心に、個別指導塾「ベスト個別」を展開しています。創業以来、13期連続で増収を達成しています。

現在、122教室を運営しており、教室数では福島県で1位、宮城県で2位という状況です。大手塾企業からシェアを奪い、それぞれの地域で大きな存在感を示しています。

増井:今回、株式会社ベストコを買収する決断をされた理由について、教えてください。

山下:我々は、教育事業の中で現在行っているビジネス、例えばホワイトカラー向けの領域に、できる限り近づけることを前提に考えているのですが、その過程で紹介いただいた企業の活動自体に、非常に共感しました。

後ほど詳しくご説明しますが、1つは、地方と都市部の教育格差などから生じる、さまざまな社会的課題を解決しようとしている取り組みへの共感です。

また、良い教育を受けた子どもたちが、最終的に良い社会を築いていく点において、我々の活動とは少し距離があるものの、パーパスの実現という観点では、事業に連結しても遜色のない内容だと感じました。

増井:やはりパーパスが非常に近しい点が、決め手になったということでしょうか? 

山下:そのとおりです。

教育事業(株)ベストコ「教育機会の格差」

山下:先ほども少し触れましたが、株式会社ベストコは、教育機会の格差を解消しようと考えています。

教育機会の格差として、学習塾の数自体が大都市圏に集中しています。それを基盤に、地方の中型よりも小さい都市や町、特に駅から離れた地域に住む子どもたちに目を向けると、周りに通える学習塾がない状況です。そのため、都市部と地方の通塾率にも差が生じています。

そもそも、教育機会の格差が都市部と地方にはあります。結果として、大学進学率も、大都市圏と地方では乖離が生じています。この差は依然として解消されていないため、株式会社ベストコでは教育機会の格差を解消し、子どもたちの将来の選択肢を増やしたいと考えています。

教育事業(株)ベストコ「教育機会の格差」に起因する選択肢の差

山下:大学に行くことが是ではなく、「大学に行くか行かないか」を本人が選択できるようにすることが重要です。そのような環境を整えるために、教育事業を展開しています。現在、教育機会の格差がある状況では、その選択肢を持てない人もいるのが現実ですので、選択肢を増やしていきたいと思っています。

例えば、高卒者と大卒者では職種の選択肢が変わります。大学に行くか高校卒業後に社会に出るかで、その後の選択肢自体が変わるのが社会の現実です。そのため、大学進学が1つの選択肢として存在し、子どもたちの将来の選択肢がより地方の中でも増えるようにと考え、塾を運営しています。

教育事業((株)ベストコ)事業戦略

山下:我々は、学習塾需要に対して供給が不足する地方において、地方のフランチャイジーに任せるのではなく、直営展開により質の高いサービスを低価格で提供します。

それにより、教育機会の格差を解消し、将来の選択肢を増やしたいと考えています。

教育事業(株)ベストコ今後の方針① 新規教室の出店

山下:ベストコは現在、我々のグループに加わったことで、リソースを投下できるようになりました。東北以外にも、北関東、さらには試験的に中国・四国にも展開を始めています。

中国・四国でも、東北で実施していたことが実現可能であることが確認できました。現在は、これまでの東北、北関東、中国、四国において、隣接県への出店を進めています。

第1四半期に教室を出店し、第4四半期である1月から3月の間に、同規模以上の出店を目指したいと思います。

教育事業(株)ベストコ今後の方針② 1教室あたりの生徒数の拡大

増井:生徒数拡大について、これからどのように取り組んでいかれるのでしょうか? 

山下:塾というのは、教室となる「箱」を借りて行うビジネスモデルです。そのため、まずはその「箱」の数、教室の数を増やしていく必要があります。

そして、「箱」に来る人を増やすことが、生徒数の拡大につながります。それには、一般的なマーケティング活動なども必要ですが、1教室あたりに収容できる生徒数には限界があります。そこで、オンラインやテクノロジーの力を活用し、塾に通わずとも受講できる教育の提供を拡大していきたいと考えています。

また、1教室あたりの生徒数が増加すると、それを指導する講師への負担が大きくなるため、この負担を軽減することで、より効率的に1教室あたりの収益を高めていきたいと考えています。これが、既存路線における施策です。

現在、「ベスト個別」は主に中学生を対象としており、多くの生徒が通っていますが、これまでは、中学生から高校生へとつなぐ部分が弱かったと認識しています。そのため、高校生向けの指導を強化し、これまで獲得できていなかった高校生層を新たに取り込んでいきます。

この点については、スライドに記載のとおりです。中学3年生が、卒業とともに「ベスト個別」を退塾するケースが多くなっています。高校生になっても、1パーセントでも2パーセントでも継続して学ぶ生徒を増やすことができれば、生徒数の拡大につながると考えています。

増井:「ベスト個別」は、少人数制の進学塾のイメージがありますが、1人の先生に対して生徒は2人から3人くらいでしょうか? 

山下:3人です。

増井:その場合、1人が演習を行っている間に、他の生徒を指導する流れになるのでしょうか。

山下:そのとおりです。今後はオンライン学習を取り入れたハイブリッド型に進化させていきます。

それにより、「この曜日はオンラインで」「別の曜日はオフラインで」といった対応も可能です。また、「Aさんはオフライン」「Bさんはオンライン」ということもできますので、講師1人あたりの生産性が高まります。

増井:受講生は、「3人で学ぶ」といった仕組みについて、どのような評価をされていますか? 

山下:3人がいいか、4人がいいかというよりは、株式会社ベストコ自体が取り組んでいる内容が重要だと思います。

同社では、講師が単純に勉強を教えるのではなく、勉強の仕方を教えています。主にコーチングを中心とした指導を行っています。

その意味では、「我々が作っている教材に対して、どのようなアプローチをすればいいのか?」など、日々コーチングによる管理を行っています。

増井:私も学生時代、某塾のアルバイトで2人を担当していたことがあります。

山下:某大手の塾ですか? 

増井:某大手なのですが、御社の運営システムと似ている部分があると思いました。そのような競合とは重ならないのでしょうか? 

山下:事業内容には、重なる部分があると思います。例えば、上場企業でいえば、株式会社スプリックスの「森塾」や、株式会社明光ネットワークジャパンの「明光義塾」などです。

取り入れている手法自体には重なる部分があると思いますが、独自性を出せるものではないと考えています。一番大きな違いは、フランチャイズ展開か、直営展開かという点です。当社は現在、120教室以上を展開していますが、すべて直営で運営しています。

そのため、講師の質やカルチャー、どのような姿勢で生徒に向き合うかが、株式会社ベストコ内では統一されています。一体感を持ちながら、同じ目線で取り組んでいるため、均一的で良質なサービスが提供できているのです。

もちろん、フランチャイズすべてが悪いわけではありませんが、フランチャイジーと本部では会社が異なるため、その違いが生徒に伝わってしまう部分があると考えています。

増井:それが御社のブランドの強みですね。

人材マッチング事業 構成企業・提供サービス

山下:人材マッチング事業について、ご説明します。ユナイテッド・リクルートメント株式会社と株式会社リベイスがありますが、本日はユナイテッド・リクルートメント株式会社をメインにご紹介します。

この事業は開始2年ほどで、現時点でお伝えできる大きなトピックはまだありません。そのため、取り組もうとしていることを簡単にご説明します。

人材マッチング事業 売上高・営業利益(2026年3月期上期時点)

山下:規模自体は小さいのですが、成長過程にある中、成長自体はしており、前年同期を上回る結果となっています。また、営業損失も縮小しています。

業績予想比較でも、概ね計画どおりに進捗しています。

人材マッチング事業(ユナイテッド・リクルートメント(株))ビジネスモデル

山下:ユナイテッド・リクルートメント株式会社は、現在RPO事業とエージェント(人材紹介)事業を展開しており、それぞれの事業において、求職者や成長企業にアプローチを行っています。

RPOは採用代行事業のため、企業の人事部をサポートするかたちです。一方で、人材紹介も行っています。求職者・成長企業の採用ニーズ、採用の中で出てくるペインを解決していくために、両事業を展開しながら、我々独自の強みが出せるよう、取り組みを進めています。

アドテク・コンテンツ事業 構成企業・提供サービス業

山下:アドテク・コンテンツ事業についてです。複数の会社がありますが、昨年フォッグ株式会社が、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズを含む第三者から資金調達を実施しました。

当社が100パーセント所有する会社でしたが、将来的にIPOを目指して外部資本を入れて、現在はアクセルを踏んでいます。そのため、フォッグ株式会社は近いうちに連結から外れる予定です。

連結から外れた後、IPOを実現し、当社が保有する株式を売却してリターンを得ることを想定しています。

アドテク・コンテンツ事業 売上高・営業利益推移

山下:アドテク・コンテンツ事業には、いくつか事業がありますが、大きく分けると、アドテク事業とコンテンツ事業の2つです。いわゆる、WebメディアやWebアプリの事業となります。

セグメント全体としては、今期はフォッグ株式会社で一部の大型案件を失注し、前年同期比でビハインドしています。ただしセグメント別で見ると、アドテク事業では、毎年安定的に売上や利益が創出できています。まずはフォッグ株式会社の成長が、セグメント全体の変動に表れてきます。

アドテク・コンテンツ事業(フォッグ(株))事業戦略

山下:フォッグ株式会社は現在、「エンタメ×デジタル」の取り組みを行っています。メインの収益源は、オンラインくじ事業です。

後ほどご説明しますが、このオンラインくじ事業で非常に多くの実績があり、いろいろなキャラクターやアーティストなどが保有する、IPホルダーとの折衝を行っています。IPホルダーとのビジネス領域を、彼らのビジネスによって拡大していきます。

そして、IPホルダーのマネタイズ機会を最大化できるプラットフォームを構築することで、企業として大きく成長していきたいと考えています。

アドテク・コンテンツ事業(フォッグ(株))オンラインくじ

山下:オフラインくじは、例えばコンビニで「ワンピース」のくじを引き、「何等だったらこれがもらえる」といったものですが、オンラインくじは、それをオンライン版で実施しています。

フォッグ株式会社が提供している「RAFFLE(ラッフル)」というオンラインくじは、オンラインくじベースの案件数では、競合サービスを含めても、最も多いのではないかと思います。

さまざまなアーティストやスポーツ球団、キャラクターIPのビジネスにおけるくじを展開しています。

コンテンツ事業(フォッグ(株))新規事業「ジャンプLAB」

山下:10月に、集英社との共同新規事業で「ジャンプLAB」をリリースしました。『週刊少年ジャンプ』の歴代作品の中から、「自分だけ」のオリジナルアイテムを購入できるサービスです。

詳細は次のページでご説明しますが、基本的にはIPホルダーが作ったものをグッズとし購入するのが、これまでのグッズ市場の中の、ユーザーとIPホルダーの関係でした。

「ジャンプLAB」では、ユーザーが好きな漫画や好きなシーンを選び、それに合わせて、ほしいアイテム、例えばTシャツやマグカップ、トートバッグなどを自分で選びます。

素材やデザインをカスタマイズすることで、自分だけのオリジナルアイテムを作ることが可能になります。従来のアイテム購入とは体験価値が大きく変わるようなサービスを提供しています。

コンテンツ事業(フォッグ(株))新規事業「ジャンプLAB」グッズ作成の流れ

山下:好きな『週刊少年ジャンプ』の作品・コマを選び、Tシャツなどの好きなアイテムを選択し、好きな場所にコマを配置します。決められた既製品を購入するのではなく、自分だけのオリジナルアイテムを作り、購入できるサービスをユーザーに提供し始めています。

現在はソフトローンチの段階ですが、今後、タイトル数や使用できる素材、コマ数などを増やすことで、より広くユーザーに認知してもらいたいと考えています。

12月後半には「ジャンプフェスタ2026」を予定しており、そのタイミングで大規模なプロモーションを実施する計画です。

アドテク・コンテンツ事業(フォッグ(株))今後の方針

山下:今後はオンラインくじを増やすことに加え、新規事業として、「ジャンプLAB」をはじめ、IPホルダーのマネタイズ機会を最大化していきたいと考えています。

最終的には、海外展開も視野に入れています。日本のキャラクターグッズは海外でも非常に需要が高まっており、他の企業も取り組んでいるため、我々も事業を展開していきたいと思っています。

株主還元 推移

山下:株主還元です。配当について、普通配当は現状の配当方針に基づき、今期を含め、23円を3期継続する方針です。

前期および前々期に特別配当を実施しましたが、今期は普通配当のみとする予定です。

2026年3月期 株主還元 株主優待

山下:当社では株主優待として、「ユナイテッド・プレミアム優待倶楽部」を導入しています。当社株式を1,000株以上保有している株主のみなさまに、1,000株から5,000株以上の段階に応じた優待ポイントを贈呈しています。

また、配当と合わせて、現時点での株価をベースにした総合利回りは7.09パーセントとなっています。

長くなりましたが、ご説明は以上です。

質疑応答:各事業の今後の展望について

飯村美樹氏(以下、飯村):「近年の市場変化、DX、人材の流動、教育のオンライン化、またコンテンツ消費の変動などを踏まえ、どの事業カテゴリを成長のエンジンと位置づけていらっしゃいますか?」というご質問です。

山下:まず理想としては、投資事業、教育事業、人材マッチング事業の3つすべてを、戦略のスライドにもあるように、大きく発展させていきたいと考えています。どれか1つに絞るのではなく、3つともバランスよく成長させるのが理想です。

ただし現実的に見ると、投資事業はこれまでも実績が大きく、近年では投資件数も増加しています。そのため、タイミング次第では大きなリターンを得られると、常に期待しています。

また、教育事業においては、株式会社ベストコが着実に成長しています。株式会社ベストコは、我々が買収する前から連続で増収を続けています。今期も非常に好調に推移しており、ユナイテッドのリソースを投下することで、さらに成長を加速させることができると見ています。

投資事業と教育事業については、当面の間、しっかりと伸ばしていけると感じています。一方で、人材マッチング事業は、まだこれからという状況です。

飯村:最後に、視聴者のみなさまに向けて、一言メッセージをお願いします。

山下氏からのご挨拶

山下:みなさま、休日の貴重な時間にもかかわらず、ご視聴いただきまして本当にありがとうございました。複数の事業を展開しているため、「わかりづらい」という感想を持たれたかもしれません。

先ほどお伝えしたとおり、ユナイテッドとしては、投資事業・教育事業・人材マッチング事業の3つを今後も着実に成長させていきます。その他の事業もしっかりと刺激を受けていることを、なるべく早い段階でみなさまにお示しすることが理想と考えています。

その実現に向けて日々邁進していきますので、少しでもご興味があれば、プレス・リリース等々をご覧いただければと思います。本日はありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日登壇者に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:収益構造で投資事業が一定になるのは大体いつくらいを想定していますか?

回答:明言は困難ですが、投資実行を拡大した成果が今後数年で出てくることを期待しています。

<質問2>

質問:なぜ一般のベンチャーキャピタルは、自己資金の投資をしていないのでしょうか? 単純に資金が足りないからなのか、リスク的なものがあるのかお聞きしたいです。

回答:各ベンチャーキャピタルの方針がありますので、一概に表現することは難しいですが、ファンド組成の主な理由として、外部資金と合わせることでスケールメリットを見込むことができることが挙げられます。また、ご指摘のように金額が大きくなればリスクも大きくなるためリスク分散といった観点もあります。

<質問3>

質問:ベストコの講師の採用や教育は、どのように行っていますか? 勉強ではなく勉強の仕方を教えているとなると、通常の塾講師とは違うのでしょうか?

回答:主に地域の大学生を中心に採用しています。勉強の仕方を教えている他塾さまもあると思いますが、ベストコの強みはテクノロジーの活用が大きく進んでいる点です。それにより効率的な学習指導や学習管理をすることができています。

<質問4>

質問:アドテク事業は会社の業績を大きく支える柱の1つになるのではないかと感じていますが、国内と海外での利益率の差はあるのでしょうか?

回答:アドテク市場は、国内外ともにGAFA含めた大手SNS/メディアが市場の多くを寡占しており、以前までのような急激な成長は難しいと判断しています。そのような中、ユナイテッドでは電子コミック領域など特定の顧客層で強みを発揮しており、今後も安定的な収益の創出を期待しています。

また、国内と海外の利益率の差ということは明確には存在しないと思われますが、広告市場においてどの領域のプレイヤーなのかで利益率は変わってきます。

<質問5>

質問:投資先のスタートアップや自社グループ事業との間で、どのようなシナジーを期待していますか? 例えば、教育事業や人材事業に投資先のサービスを導入するといったかたちはあるのでしょうか?

回答:主に、教育事業で育成された人材を、人材マッチング事業を通じて、投資先スタートアップへマッチングすることで、投資先の成功確度が上昇していくことを期待しています。ご質問いただいたような連携も期待しています。

<質問6>

質問:現在は国内中心の事業展開ですが、今後海外市場や新規領域への進出計画はありますか?

回答:現時点で明確な計画はありませんが、コア事業の拡大のために、柔軟に検討していきます。

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