fbpx

マイクロアド Research Memo(3):消費者の購買プロセスの段階に応じて広告配信を行う「UNIVERSE」

マネーボイス 必読の記事



■マイクロアド<9553>の会社概要

2. データプロダクト
「データプロダクト」は、企業のマーケティング課題を解決するためのデジタル広告ソリューション群で構成される。消費者に関する膨大なデータの分析を基に顧客ごとに最適な広告配信を実現する「UNIVERSE」の収益が含まれる。また、「UNIVERSE」には2024年4月に買収したデータ活用支援事業を展開する子会社UNCOVER TRUTHの収益が含まれる。UNCOVER TRUTHは、サイト内行動分析ツール「Content Analytics※1」や企業が保有する既存顧客のデータ分析を行うCDP※2「Eark※3」、即戦力データアナリストの人材常駐支援サービス「DX-Accelerator」を提供している。なお、「デジタルサイネージサービス」はMADSを2024年11月に非連結化したため、データプロダクト事業の収益は「UNIVERSE」のみとなる。

※1 コンテンツデータによるユーザー体験分析ツール。ユーザーが「ページ内のどこのコンテンツに注目しているのか」がわかり、嗜好性を数値化することで、顧客のより詳細な属性を分析する。
※2 Customer Data Platformの略。複数のデータソースから顧客データを収集・統合管理し、それらのデータ分析によって個々の顧客に適したマーケティングやカスタマーエクスペリエンスを提供するプラットフォーム。
※3 顧客データの収集・統合・活用をノーコードで可能にするプラットフォーム。データエンジニアの稼働を抑えることでCDP関連の開発コストや運用コストの削減に寄与する。

a) 「UNIVERSE」の概要
「UNIVERSE」は業界や業種ごとに多種多様な消費者の好みや購買プロセスを分析し、そこから得られた知見を活用することによって顧客が抱えるマーケティング課題の解決を支援するサービスである。「UNIVERSE」は同社が開発した2つの独自プラットフォーム「UNIVERSE DATA PLATFORM」「UNIVERSE Ads」により構成される。

「UNIVERSE DATA PLATFORM」には、消費者のライフスタイルの変化を捉えるデータ、消費者の性別・年齢などを推定したデモグラフィックデータなど一般的なデータ群に加えて、業界・業種に特化した大量のデータが蓄積されている。2025年9月期末時点で220を超える外部データ保有企業・メディアから閲覧履歴などのデータを収集・集約しており、これらを分析することによって消費者の複雑な購買行動を分析している。UNCOVER TRUTHの連結化により、同社が保有する企業の顧客データなどの分析・活用が可能となった。これら大量のデータを組み合わせた分析を通じて、消費者の多様な購買・消費行動に関するより多角的で深度のあるマーケティング支援が可能となる。

「UNIVERSE Ads」は、「UNIVERSE DATA PLATFORM」が導き出したインサイトを活用し、RTB(Real Time Bidding)という広告配信技術を用いて顧客ごとに適切な消費者に向けて広告配信を行うプラットフォームである。中核となるのが、同社のAIによる最適化アルゴリズムである。これは、企業の製品・サービスのカテゴリ、広告の掲載面の品質やコンテンツの内容、配信のタイミング、広告クリエイティブの形式(静止画・動画・ネイティブ広告など)など広告の費用対効果を決定付ける要因を変数として解析し、費用対効果を最大化する設計となっている。これにより、リアルタイムで消費者の特性に応じた広告を最適な価格で配信することが可能となっている。また、複数のSSP(Supply-Side Platform)との接続に対応しており、月間600億を超える配信先に対して広告を届けることができる点も、ターゲティング精度の向上に寄与している。

「UNIVERSE DATA PLATFORM」「UNIVERSE Ads」の連携により、顧客の業界業種に応じたマーケティングプロダクトの提供が可能となり、同社は複数の業界に特化したプロダクトを開発し、顧客へサービス提供を行っている。たとえばBtoBマーケティング支援「シラレル」は、企業の特定部門の役職者を推定し直接アプローチできるプロダクトである。人材業界に特化した「MARBLE」は、求職者のWeb行動履歴や関心領域を基に、潜在層へのリーチを可能にしている。飲料・食品業界に特化した「Pantry」は実店舗での購買データを活用し、広告が商品購買に与える影響を可視化できる。自動車業界に特化した「IGNITION」は、消費者の比較検討から購買直前までの段階に応じたアプローチが可能である。エンタメ業界に特化した「Circus」は、作品ジャンルや監督、俳優など消費者の趣味嗜好に基づいたマーケティングを可能にする。美容・化粧品業界に特化した「Vesta」は、美容への関心や購買行動を基に、広告配信から効果測定までを一括で支援する仕組みを備えている。医療・製薬に特化した「IASO」は、データを活用し特定の疾患予備軍を推定することで、疾患やワクチンの啓発活動を実施している。現在の業界特化型プロダクトは19業種に展開しており、特定の企業や業種に大きく依存しない仕組みを構築している。

なお、「UNIVERSE」の収益モデルは従量課金型であり、顧客がマーケティング活動を行うたびに同社に支払われる広告費とデータ費が売上として計上される仕組みである。

「UNIVERSE」では、同社が保有する多様なデータ資産を他社広告プラットフォームへ連携する取り組みを本格化させており、同社のデータ経済圏拡大に向けた重要な転換点を迎えている。従来は自社広告プラットフォーム「UNIVERSE Ads」を軸に、Webサイトやスマートフォンアプリへの広告配信が中心であったが、2025年度から大手SNSや動画プラットフォームへの配信が可能となったことで、データ活用の射程が一段と広がった。この連携強化により、「UNIVERSE」が保有する各種データの利用範囲が拡張し、広告主に対して提供できる価値も高まっている。他社プラットフォームから得られる収益は、これまでコンサルティングサービスのうち「その他」に区分されていたが、2025年度はデータ連携の強化に伴い販売を強化したことから、売上が前期比37.8%増、粗利も同33.8%増と大きく伸長した。組み換え分を反映した、UNIVERSEの「自社プラットフォーム」と「他社プラットフォーム」を合算した、第4四半期における売上高は15%増、粗利は23%増となった。2026年度はこの動きをさらに加速させる方針で、他社プラットフォームとの連携拡大を「UNIVERSE」の販売戦略における最優先テーマとして位置付ける。

こうした事業領域の拡大を踏まえ、同社は2026年9月期より、事業セグメントを構成するサービス区分の見直しを実施する。これにより、他社プラットフォームから得られる収益は、データプロダクトサービスのうち「他社プラットフォーム」に区分される。これは「UNIVERSE」を主力事業とする戦略を明確化し、同事業が提供する価値範囲の拡張を報告区分にも反映させるものであると弊社では考える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

いま読まれてます

記事提供:
元記事を読む

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー